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サッカーを遊ぶ南米、サッカーを遊ばない日本(前編)

text by 植田路生 photo by Kenzaburo Matsuoka


大事なのは想像力を小さいときに育てること(写真はフランサ)【写真:松岡健三郎】

「そう。好きなチームが違ってくるようになると親とも口論するし。そういう環境ができているんです。じゃあ、日本で同じことをやろうとしてもできないです。環境が違うもん。だから同じ環境にはできないから近づくためにはどうすればいいか。基本というのは、練習すればある程度はものになる。だから小さいときはいらないんですよ。いつでも覚えられるもん。

 大事なのは想像力を小さいときに育てること。子供ってのは一番まだ何もできていないから、手を突っ込んだらダメだと思います。大人が『こうだ、こうだ』と言うと、子供たちの邪魔をしないでくれ、と言いたいくらい。なぜなら今、ブラジルのプロ選手の出身地は9割田舎です。あと1割はフットサル。それは、自由にボールを蹴られる場所がいっぱいあるから。町でカカみたいな選手とか何人かが自由にフットサルをやっているから、ボールをいっぱい触れるし、ゲームばかりやっているからうまい人も出てくる可能性が高くなる。

 僕に権力があったら日本の子供たちが10歳になるまでフットサルしかやらせない。そう言うとみんな、『あんまりフットサルのことばかり考えていると…』なんて言うけど、違うんです。サッカーのことを考えているんです。小さいスペースでボールを蹴ってほしいんです。遊んでほしい。それから、素質がある子が練習、サッカーをすればもっと結果が出るんじゃないかな」

サッカーがうまくなるにはまず「見る」こと

「スタジアムの余ったスペースで、サッカーを見ないでペットボトルとかを蹴っている子供をアルゼンチンでよく見かけました。でも、あれ、最高の環境なんですよ。最高のサッカーを見られて、それを自分なりに真似しているという。そういう遊びの中で出てきたアイデアがいっぱい蓄積されて、それがたまたま最良の選択をできるのがペレだったり、マラドーナだったり、ジダンだったり、プラティニだったりする」

「僕が子供たちにまず言うのは、サッカーがうまくなるために、まずどうすればいいか。大体みんな練習するとか、礼儀正しくしなきゃならないとか、いろんなことを言うんだけど、結局は『見る』こと。人間って見てないことできるわけないもん。子供たちにわかりやすく言うのは、A君はサッカーの試合を1回しか見たことがない。B君はサッカーの試合を1万回見たことがある。1回と1万回。誰がサッカーがうまくなる確率が高いの、と。5歳の子でもわかるわな」

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