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吉田麻也が語る「激闘の軌跡」 ~アジアカップで得た収穫と課題~(後編)

2011年のアジアカップを制した日本代表のディフェンスラインで奮闘した吉田麻也。彼の目に今大会の日本代表はどのように映ったのだろう。日本代表の軌跡と勝因を振り返ってもらうとともに、自身の収穫と課題も聞いた。

text by 中田徹 photo by Kenzaburo Matsuoka

 このインタビューは、2011のアジアカップ直後に行われ、サッカー批評issue50に掲載されたものです。現在はプレミアリーグのサウサンプトンで活躍する吉田のコメントを、改めて振り返ります。

【前編はこちらから】 | 【サッカー批評issue50】掲載


1試合目にピークが来てしまったアジアカップ

――日本代表として初めてビッグイベントを経験しましたが、オーストラリア戦までを振り返って。

「1試合目にピークが来ちゃった(苦笑)。僕にとっては1発目が一番肝心だった。だからしょうがないというか、よかったというか。でも大会を通してとりあえず印象は残せたと思います。これから代表に定着していくためには『何か光るな』と思ってもらえるようなプレーをしないといけないけど、それはできたと思います。

 去年1年、連戦自体をやってませんでしたので、その影響はかなりありましたけど、ピークが最初に来ちゃった。それでその後の試合ではパフォーマンスが若干下がりました。DFはそんなに走るポジションじゃない。集中力だとか読みとかでカバーできると思う。悪いときでもアベレージよりちょっと上のパフォーマンスを見せられるようにならないといけないと思う。それが世間一般で言われる『安定感』じゃないかなと僕は思ってます。そこは意識してプレーしました」

――そういう意味ではオーストラリア戦は合格点だったのでは?

「川島さんに何本も救われましたけどね。後で試合を見ると、いつやられてもおかしくなかった。でも決勝は運も必要だと僕は思う。そういう意味では決勝は何とか踏ん張れた試合だったと思います」

――オーストラリア戦は吉田選手のフィードが慎重だった。

「普段から『危ないな』というのが僕にはある。『これ、通ったけど、とられていたら……』みたいのがありますよね。そういうのには細心の注意を払ってノーリスクでプレーしました。

 Jリーグでやるんだったら僕のガタイで問題ないですけど、ヨーロッパでやるにはこのガタイでは足りない。だからもっと強くなってもっと相手をつぶす能力が必要になっていきます。日本代表にはいいボランチがいますから、この大会で『上の方のチームにはいいボランチがいるから、将来ステップアップしたとき、センターバックとしてビルドアップがそんなに問題になることはないだろう』と気付きました。

 逆に僕には守備の面で足りないところがいっぱいある。カタール戦で(セバスチャンに)中に切り返されてシュートを打たれたのも、コースはほとんどなかったんだからシュートは川島さんに任せればよかったのに無理して取りに行ってしまいました。そういうわけで今大会の僕の課題は守備力と集中力でした。特に中澤さんや闘莉王さんと僕との決定的な違いは守備力だと思います。

 オーストラリアではやっぱりケーヒルがすごかったです。僕はもともとプレミアに行きたいと思っています。ケーヒルはずっとプレミアでやっている。その選手と対等に戦えればプレミアに近づくと思いましたが、そんなに甘くなかった。まだまだか……というのは痛感しました。

 これからDFとして上に行きたいんだったら、もちろんビルドアップは出来ないといけませんがちょっとエレガントにやりすぎているというか……。それは僕の特徴かもしれません。でもエレガントすぎると、見た人に『DFとしてこいつ軽いな』という印象を与えてしまう。それはスカウトからもそう見えるかもしれない。どうしてもイングランドみたいなところへ行くんならそういうことをしちゃいけない。そこが足りないと思いました」

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