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広島市スタジアム建設活動の現在地 ~キーマン・石橋竜史市議に訊く~(前編)

text by 鈴木康浩 photo by Yasuhiro Suzuki

スタジアム建設に向けた問題点

――新スタジアム建設を見据えて、そういう劣悪な環境を整備しようという機運はこれまでに何回もありました。

「ええ。最近では2007年度に前市長が3期目の市長選に出られるときにマニフェストに『サッカー専用スタジアムを建設します』と掲げて立候補されて、やはり機運が高まったんです。でも、これまでどおり議論が立ち上がっては消えて……」

――問題はどこにあるのでしょうか?

「一つは『ビッグアーチで何が悪いの?』といった危機意識の低さでしょう。ビッグアーチ周辺の渋滞の問題にしても、哀しいかな、現場が窮状を訴えても新聞やラジオが過去5年で二桁も報じていない。メディアにも危機意識がなかった。私は親しい選手たちに『このままではジリ貧になるから感じたことはどんどん発信してほしい』と伝えていました。

 それで2008年頃から選手たちも雑誌などで声を発するようになって、自分たちの声で環境を変えることができると感じてくれたんです。私もクラブと一緒に『声を挙げていきましょう』とやっていたんです。

 ただ、クラブには声を挙げられない事情もありました。ビッグアーチは広島市の持ち物で、広島市はクラブの株主。苦しいときに赤字の補填を過去もしていただいている。だから、私としてはまずクラブが声を挙げやすい環境をと思って、議員になってからのこの1年半は、もちろん微力ですが行政や議会に『クラブはこういう現状なんですよ』『これだけの集客産業なんですよ』という発言を繰り返してきたんです。

 今季の開幕戦の浦和レッズ戦には私たちの会派21人中17人にビッグアーチに公共交通機関を使って来てもらい、一般の観戦席で観てもらったんです。それでみんなビッグアーチの現状を理解してくれました。議員さんの中にもサンフレのファンがすごく増えたんです。

 そうやってクラブが声を挙げたときに市から『何言ってんだ』と文句を言われないような関係が少しずつできた。そして今年は何と言ってもチームが優勝できたことが大きな追い風になっています。その中で現場が声を挙げて、選手が街頭で声を挙げることで、よりリアリティが増したものをメディアが受けて報じるようになった。そんな環境がようやく整ってきたのがこの半年なんです」

【後編に続く】

初出:サッカー批評issue60

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