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『決定力不足』という言い訳にサヨナラを ~決定力を個人技頼みにしないための戦術的アプローチ~(後編)

日本代表が試合で無得点に終わると、「決定力不足」「決定力のある選手がいない」などと報道されることが多い。長年言われ続けている問題だが、未だ解消されることはない。これを解決するには、その要因を分析し、そして克服する手段としての戦術にアプローチする必要がある。

text by 清水英斗 photo by Kazuhito Yamada

【前編はこちらから】 | 【サッカー批評issue56】掲載

[戦術的アプローチ1]ゴールの可能性を広げるリッピとビエルサの戦術

【図1】ファーサイドシュートの約束事
【図1】ファーサイドシュートの約束事

 前編に続き、次は戦術的なアプローチを試みる。前述したように、ゴール前は相手の激しい抵抗を浴びるエリアであり、きれいに崩し切ることは容易ではない。

 時間とスペースが限られているのなら、攻撃側はそれを上回るスピードを発揮しなければならないだろう。キーワードはオートマティズムだ。過去にユベントスやイタリア代表を指揮したリッピ監督は、「シュートは必ずファーサイドに打て」というチームの約束事を作ったという(図1参照)。その意図は主に3つある。

1.GKが逆モーションになる

 シュートを打つ選手に対して、GKは二アサイドへ移動する。そのときGKが構えを作る前にファーサイドへシュートを打てば、逆モーション(逆を取られる形)になって反応するのが難しくなり、ゴールが決まりやすい。

2.ゴール前にボールがこぼれやすい

 ニアサイドにシュートを打った場合、GKがはじいたボールはコーナーキックになる可能性が高いが、ファーサイドでGKがはじいたボールはゴール前にこぼれやすい。また、シュートコースがファーサイドとあらかじめ決まっていれば、味方は予測して走り込める。

3.枠を外れても、味方が押し込むチャンスがある

 ニアサイドに打って枠を外れた場合はノーチャンスだが、ファーサイドに打って枠を外れた場合は、大外から走り込んだ味方が押し込む可能性がある。

 シュートコースに関してあえて状況判断の要素を削ったことで、選手が迷いなくプレーできるという側面もある。このような戦術的なオーガナイズも、チームの決定力を高めることに寄与するだろう。イタリアサッカーの得意分野でもある。

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