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プレミアリーグを席巻するベルギー人選手。優秀な選手を輩出する育成改革と欧州随一の適応能力とは?

text by 山中忍 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

異文化への抵抗感が少ない環境

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チェルシー加入後すぐに結果を出しているアザール【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 チェルシーが約48億円で競り落としたエデン・アザールは、14歳から昨夏までの7年間をフランスはリールの選手として過ごしてきた。故郷のベルギーには、単一の母国語が存在せず、フランス語とオランダ語の他、ドイツ語が主流の地域まである。

「欧州のヘソ」とも呼ばれる小国は、車で1、2時間も走れば隣国の国境という立地条件だ。アザールに限らず、若い頃から言葉や文化の異なる環境への抵抗感は少ない。加えて、ともすれば、外国人選手に「陰鬱」や「退屈」として敬遠される、地方のプレミア勢への移籍を躊躇う様子もない。

 気候はイングランドと大差なく、首都ブリュッセルでさえロンドンより遥かに物静かな環境の出身なのだから。ベルギー人選手のプレミア適応能力は、ピッチ内外で欧州大陸勢の中でも随一と言える。

 実際、アザールはチェルシー1年目にして合計14ゴール20アシストの即戦力となった。アストン・ビラ1年目にリーグ戦でチーム最高の19得点を上げたベンテケには、シーズン中から、トッテナム、リバプール、アーセナルらの上位勢が引抜きに興味を持っていた。

 フェライーニは、今季のプレミア王者、マンチェスター・ユナイテッドへの移籍が噂されている。イングランドのサッカーファンが、大英帝国だった自国に対し、近隣諸国に支配された歴史を持つベルギーを、代表戦のスタンドで「中身はフランス人だよな!」と合唱してからかったのは過去の話。

 今では、プレミア選手が揃うベルギー代表を、「W杯ブラジル大会の優勝候補」に挙げる者も少なくない。2012-13シーズンを経て、時代は変わった。

【了】

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