【ロングインタビュー】カルロ・アンチェロッティ、勝者の戦術論(前編)

このたびレアル・マドリーの監督に就任することが決まったカルロ・アンチェロッティ。これまで率いてきたチームでは、柔軟にシステムを変化させ、選手の人心を巧みに掌握し、セリエA、プレミアリーグ、CL、クラブW杯など数々の功績を残してきた。欧州屈指の強豪をつくりあげてきた 手腕と戦術メソッドとはいかなるものなのか? インタビューはパリ・サンジェルマンの監督に就任した直後のものだが、彼の戦術論を十分に知ることができる。

2013年06月26日(Wed)12時42分配信

text by クリスティアーノ・ルイウ photo Kazhito Yamada / Kaz Photography
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バルサの模倣は不可能と考えるべき

――ミスター、本来であれば監督に就任されたばかりのパリ・サンジェルマン、仏サッカーについてまずはお聞きしたいところですが、それが今日(1月7日)の時点ではNGということで、ならば今回はテーマを戦術に絞って話を聞かせていただきたい。選手時代にスクデット3度、チャンピオンズカップ優勝2度、監督としても同タイトルを獲得している貴方は、近年のサッカー戦術の変遷を、とりわけ“バルセロナによる席巻”が続く今日の状況をどう見ておられるのでしょうか?

「ありきたりの言い方になってしまうんだが、やはりまずもって言うべきは、今日のバルサによる圧倒的支配は当然の結果であるということ。もうすでに多くの人が知るように、彼らの今は一日にして作られたわけではない。およそ10年、正確に言えばさらに数十年も前から少しずつ、着実に、一貫した哲学のもとでバルサは今を築き上げてきた。ただ、やはり最も着目すべきは、この十数年、90年代末期から今に続く彼らの歩みなのだろう。いわゆる“オランダ化”から一定の距離を取り、それと同時に徹底した“育成強化”に努めてきた成果だ。優れた育成が分厚い土台となってトップチームを支え、そこへ外部から実に的を得た選手を取り込むことで彼らは、自分たちの哲学を一切変えることなく、文字通り“理想的な”チームを作り上げてみせた。

 なかでもフランク(・ライカールト)が監督だった時代に造った道が、今のグアルディオラの成功につながっていると言えるのではないか。今日の我々が見るバルサは、まさにそうした長い積み重ねの結晶なんだと思う。とすれば、そのバルサが中心となるスペイン代表が08年と10年、ユーロとW杯を連続して制してみせたのは半ば当然の結果ということになる。我々のみならず、世界中のクラブがバルサに学ぶべき点は無数にある。

イニエスタ
アンドレス・イニエスタ【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 思い出すのは、私がミラン監督だった03年、我々はホームにバルサを迎え、非常に苦しんだ末に何とか1-0の勝利を手にしたんだが、あれは終了間際のこと。途中出場でピッチに送り込まれたばかりの色白で華奢な少年が我々のゴールのクロスバーを叩いていた。もちろん、それは同点とされていても決しておかしくない場面。

 そのシーンを演出したのが、いまや世界屈指のMFとなった彼、当時はまだ弱冠19歳のアンドレス(・イニエスタ)だったわけだよ。しかも、あの頃にして既にバルサの主将は、おそらくは25歳になったばかりであったであろうプジョル。彼らは若い才能の起用を決して恐れない。これがバルサのメンタリティーであり、そして彼らが長く強さを堅持できる最大の理由だ

 思うに、世界のサッカー史上で今日のバルサと比較し得るチームは僅かにふたつ。70年代のアヤックスと80年代のミラン。つまり、“クライフのアヤックス”で育てられ、続いて我々とともに“サッキのミラン”でプレーしたライカールトが今から5年前、後にグアルディオラによって受け継がれる道を築いたのは決して偶然ではないということになる。

 クライフのトータル・フットボールと、それをさらに進化させたサッキのプレッシング・フットボールが融合され、そのエッセンスがバルサ固有の哲学を形作る一辺となっている。したがって、そこに我々が理想的なサッカーを見るとしてもそれは何ら不思議ではないということになる。もっとも、それを実現するのはこうして言うほど簡単ではないんだが……(笑)」

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