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【ロングインタビュー】カルロ・アンチェロッティ、勝者の戦術論(前編)

text by クリスティアーノ・ルイウ photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

「今のバルサと対峙するには“kg”と“cm”で勝負すべきだ」

――つまり、欧州トップレベルのクラブであれば、あれほどまでの実力差は見られなかったと?

「間違いなく。少なくとも、例えばミランであれば、今季のCL(グループリーグ)での2戦の結果が示す通り、より接近した展開になったであろうことに疑いの余地はない。とはいえ、今のバルサが明らかに別次元にあることもまた確かなんだが……。

 いずれにせよ、今のバルサと対峙するには彼らが備えていない部分で勝負すべきだ。それは“kg”と“cm”。つまりはパワーと高さ。ここにより多くの比重を割いた戦い方を実践しなければならない。ただ、それと同時に細心の注意を払うべきなのがバルサの走力。あの華麗なポゼッション、流れるようなパスワークに相手も見る側も往々にして目を奪われてしまいがちだが、それをバルサが質の高い技術だけで可能にしているわけではないという事実。ここを考える必要がある。彼らの途切れないポゼッション=技術+圧倒的な量と考え抜かれた走力。この足し算によって答えは成り立っている。そして、この運動量、すなわち走行距離の平均値は、昨季のCLのデータによれば、ほとんどの場合で対戦相手の+50~60%にも達している。ならば、バルサに立ち向かうにはその走力で圧倒し、パワーと高さで勝り、本物のディフェンダーが数少ないがために時に露呈する守備の甘さを鋭く衝かなければならない。

 ところが、件のクラブW杯でサントスが採った策は、いま私が述べたものとはそれこそ真逆だった。むしろ彼らはバルサと同じスタイルで対抗しようとし、だがバルサの半分にも満たないポゼッションのスピードしか持たないサントスは無惨な結果をみるだけに終った、と。あのサッカーを続ける限り、仮にサントスが10度バルサに挑んでもすべてが同じ結果に終わるだろう」

【中編に続く】

初出:欧州サッカー批評5

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