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【特集:ボーダーレス化する世界】中東の帰化を巡る、札束と国籍(その4)

中東諸国における帰化とはどのようなものか? アフリカやヨーロッパとも密接に関わる事情について、諸外国に精通するフリーライター・森本高史氏に話を聞いた。

text by 編集部 photo by Asuka Kudo / Football Channel

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血なのか、それともサッカーなのか? 中東の帰化戦略の変化

――良い選手がいるという情報を持っていて“漏れた選手”に目をつけて、帰化させる人や組織がいるのでしょうか?

「ブローカーみたいな人に売り込むケースもあります。たまたま自分の知っている選手を売り込んでいると思います。そこまでスーパーな選手はベナンに流れ込んできてはいませんから」

――中東の帰化戦略が変わってきていますか?

「中東でもレバノンやシリア、ヨルダンなど全部に共通していますけど、ヨーロッパに移民がいるんですよ。シリアがW杯三次予選の時に、スウェーデン生まれの選手を呼びました。ただスウェーデンの代表歴があって三次予選は失格になりましたけど。レバノンにもスウェーデンやデンマークでプレーする選手がいます。向こうで生まれたり、育ったりしたサッカー選手を取ってきていますね。

 ちょっと前から今でもやっているトルコは、ウミト・ダバラやイルハン、バシュテュルク、アルティントップ兄弟といったドイツ生まれの選手を取ってきて、ドイツサッカー協会からかなり批判がありましたね。やっぱり海外に住んでいても、俺は『トルコ人だ』『シリア人だ』『ヨルダン人だ』って思っていますから。そこを上手く利用して代表選手にしていますね。モロッコ代表の五輪メンバーだってオランダ生まれ、ベルギー生まれ、ドイツ生まれを取ってきていますよ。

 世界的に移民は随分とボーダーレス化しています。例えばU-17とかU-20に選ばれていたら、そのまま国籍をもらう選手もいます。これはもう二通りに分かれちゃいますよね。血なのか、それともサッカーなのかで。

 いままでは国籍変更は21歳以下で決めなければなりませんでしたが、2009年にFIFA総会でアルジェリアから撤廃する案が提出されました。ヨーロッパは反発しましたが、アフリカや南米が結託して年齢制を撤廃させました。昔はユースでちょっとプレーしたらアウトでしたが、ユース時代はまだ思考力もないし、未成年という理由で承認させました。

 だからユース年代に日本でプレーしていても、たまたまカンボジア国籍を取っていれば、カンボジアA代表でプレーできる。いまはA代表でプレーさえしなければ良いんです」

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