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バルサU-12圧勝にはワケがある。リバプール・コーチが指摘する日本の育成現場に欠けていること

text by 永田到 photo by junior soccer editorial staff

コーチは勝利至上主義になるべきでない

「もし『味方がシュートした場合』と答えたらなぜ自分がシュートを打ったのかという判断のプロセスについてさらに聞いていく。『自分がシュートした場合』と選手が答えたとしても、自分の方が決める可能性があるといった場合は、その選手が選択肢を複数持って、吟味して、自分で判断していたということになる。

リバプール
リバプールのアカデミーではリーグ戦を行っていない【写真:ジュニアサッカーを応援しよう!編集部】

 こうした場合は、(パスを出すべきだったかどうかはともかく)自分で判断したというプロセスそのものを褒める。こうした対応をしている内に、どの選択肢が最も適切なのかということを、選手自身が常に判断しながらプレー出来るようになっていきます」

 目にした事実だけを元にして、「さっきのはパスが正しいだろう」とコーチが選手に結論を押しつけたり、従わせたりするわけではない。選手に問いかけをしていくことで、その瞬間に選手が置かれている状況を共有し、自発的な成長を促していくというスタンスだ。

 選手の評価についてはどうだろうか。

「結果をもとに評価しています。ただ、褒めることについてはプロセスについて褒めていきます。もちろん、サッカーやスポーツに関わっている以上、負けることがいいなんていう風に考える人は誰もいないと思います。

 ただ僕は、こうした年代の育成に関わるコーチが、勝利至上主義になるべきではないと思っているんです。選手の成長の妨げになると思うので。実際に、リバプールのアカデミーではリーグ戦を行っていません。

 これはトランメア・ローバーズ(リーグ1※イングランド3部リーグに相当)の育成についても同様です。定期的に試合は行っていますが、それらのほとんどはフレンドリーマッチに近いものです。

 もちろん大会に招待されたら公式戦も行いますが、普段週末行っている試合については記録を残さない。そうすることで、勝敗という結果を重視しないようにしています」

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