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内田篤人の1on1を徹底分析。世界で戦えるサイドバックの“個の力”とは?【後篇】テクニックのこだわりに1on1の真髄が見える!

text by 河治良幸 photo by Asuka Kudo / Football Channel

バランスを取ろうとする意志が失わせる爆発力

今矢:僕もドイツでプレーしていましたが、向こうのフォワードはかなり適当に上げても決めちゃうんですよ。こんな適当なセンタリングで決めてくれるの? という感じで、決定力がすごいので、ボールが多少逸れたって何とかシュートまで持ち込んじゃう。

 ただ日本では代表とは言え、そうはいかないですよね。中盤の選手はすごくいい選手が多いですし、サイドバックもいい。でもGK、センターバック、センターフォワードは良い選手がなかなか出てこない。

 海外の選手が日本代表と対戦したら口を揃えて「すごくいいチームだ」って言いますよ。でも、前が弱いと。前が良ければやられていたよ、という評価をされる事がすごく多いです。

 それは内田選手のテクニックどうこうではなくて、シャルケとは違うプレーをする必要があるっていう部分が問題だと思うんです。

河治:ヨルダン戦で苦しい時に自ら突っ込んで、PKを取ったシーンがありましたよね。結果、遠藤選手が外してしまった訳ですが、ああいう風に内田選手が行かないとチームを救えないというシーンでは出てきますよね。

 左サイドの長友選手との兼ね合いはあると思いますが、その中でも積極的なプレーをもっと増やして、前に任せ切らずに内田選手がペナルティエリア内にまで入ってくるとか、そういうところは求められるのかなと思います。

 ここ数年の日本代表での内田選手は、チームのバランスを優先していますね。前に出て行かないのも恐らくザック監督からの指示ではなくて、日本代表はどうしても攻撃に人数をかけたがるチームなので、自分はバランスをとる側にならないといけないって言うマインドからだと思います。

 本人はリーダーの柄ではないって言いますが、代表に長く定着していますし年齢的にも中堅になってきていますし、自分がバランスをとろうと考えている様には思いますね。ただそれが爆発力のなさに繋がってしまっているという事も言えるのかなと思います。

今矢:自分が前にドリブルできる様なスペースを以前は作っていたと言いましたが、今の内田選手はそのスペースでボールを受けているんです。そのスペースで受ければダイレクトで上げられるって言うポジションで受けたがっている様に思います。それはそれで悪くないんですが、以前の動きも組み込んでいって欲しいとは思いますね。

 ボールタッチ、センタリング、上がるタイミング、全てにおいてザッケローニ監督には信頼されていると思いますし、恐らく今後も外れることはないと思いますが、さらに日本代表の強みとして、日本とドイツのいい部分を取るような選手になれれば、日本代表にとっても大きなプラスになると思います。ザック監督はそこを期待していると思います。

河治:そろそろ融合して行ってほしいなと思いますよね。日本で学んできた、やってきたプレーと、ドイツで成長した部分を融合させてほしいと思います。新しい内田篤人像を作っていってほしいですね。それが出来ればさらに存在感のあるプレーヤーになっていくと思います。

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