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日本のレフェリーは本当にレベルが低いのか? 「審判問題」の本質を問う

text by 石井紘人 photo by Asuka Kudo / Football Channel

アジアの審判員のレベルは上がっているが…

 アジアで行われる多くの試合におけるアジアの審判員のレベルは徐々に上がっている。98年フランスW杯アジア最終予選の対ウズベキスタン戦で、城彰二のゴールがオフサイドで取り消されたような判定のミスは少なくなってきた。その反面、未だにラフなスライディングタックルなどへの判定の精度は低い。昨年のアジアカップ、対カタール戦でのスブヒディン主審の判定が最たる例で、懲戒罰の基準は理解し難かった。見えているにもかかわらずで、『判定力』の低さでそういった事態を招いていると言えるだろう。

 一方、日本の審判員たちが「あれで、カード(懲戒罰)なしかよ」というシーンを頻発させているわけではない。むしろ、『判定力』に関しては、少なくともプレミアリーグやリーガエスパニョーラよりは優れている。これは、日本企業、トヨタなどの強み同様に「勤勉さ」「正確性」が要因に挙げられる。

 世界から評価されている証拠に、例えば西村雄一は、南アフリカW杯におけるグループリーグの開幕戦という大会の基準を示す場を割り当てられた。家本政明もドイツW杯前の国際親善試合、イングランド×メキシコ戦の主審を務め、難なく試合を終わらせている。『判定力』は世界に出しても引けを取らないことを、彼らが体現しているのだ。

 フィジカル能力面でも日本の評価は高い。相手とのコンタクトがある選手たちの場合、海外でやるには身体的ハンデはネックになる可能性があるが、審判員にはコンタクトが皆無である。むしろ、『判定力』を活かすには、試合についていく持久力が必要となるが、その点は日本人の持ち味だとJFAテクニカルニュースに記載されている。

 その他にも争点(コンタクトが起きた地点)への急な方向転換やアジリティも日本人の武器であるという。つまり、日本人には審判員に必要な資質が備わっているのだ。それを物語るように、佐藤隆治はアジアの国際審判員の体力テストで、ぶっちぎりの成績を残した。

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