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Jリーグの試合はなぜスタジアムが満員にならないのか? 求められる「楽しすぎた、やばい!」の創出

text by 編集部 photo by Tomoya okajima

「非常に満足」できるスタジアムへ

 では、どうしたらJリーグのスタジアムが満員の熱烈なサポーターで埋まる熱狂的空間となるのだろうか。チームが強ければいいのか。スター選手がいればそれでいいのか。いわゆる「地域密着活動」に精を出し、地元住民に愛されるクラブになるという理想論は実現可能なものなのだろうか。

 とても興味深いデータがある。サッカーとは異なる分野ではあるが、プリンター等で有名な機械メーカーであるゼロックス社の、製品とサービスに対する顧客満足度調査である。

 月に4万人もの顧客から回答を求め、最高5点から最低1点までの5段階尺度で顧客満足度を調査し、分析している。その結果、驚くべきことに、「5.非常に満足」と評価した顧客と、「4.満足」と評価した顧客とでは、再購買率が何と6倍も異なることが明らかになったのである。

つまり、同じ「満足」という結果であっても、「4.満足」と「5.非常に満足」の両者では、企業にもたらす利益が大きく異なり、顧客の満足度を「非常に満足」させる戦略がいかに重要か示唆されている。

 これは、Jリーグにも置き換えることができる。極端な話、少々言葉が抽象的だが、初めてスタジアムを訪れたサポーターに対して、「楽しかった!」ではなく、「楽しすぎた!やばい!」と感じてもらわなければならないのである。そしてその小さな感動の積み重ねがサポーターを徐々に増やしていき、満員のスタジアムの実現に近づくのである。

 スポーツの場合、ファン・サポーターを「非常に満足」に導く製品は“試合”である。しかし、試合というのは始まってみなければわからない不確実なものである(それこそがスポーツの魅力なのだが)。

 贔屓チームがビハインドの展開から怒涛の追い上げを見せ、後半ロスタイムのゴールで勝利する試合もあれば、覇気も気力も感じることのできない0-0の試合もある。0-5で負けたりでもすれば、2度と来るか、金返してくれと感じてしまうかもしれない。その不確実で不正確な“試合”という製品を通じて、「非常に満足」してもらわなければならない。

 クラブ側は、試合の価値を高め、「非常に満足」してもらえる試合を提供すべく、チームの勝利に向けて、戦力の補強や練習環境の整備、選手のモチベーション向上につながるような取り組みなど、精一杯の努力をしなければならない。

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