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奈良クラブとも電光石火で提携。仕掛け人に聞く、川崎フロンターレはなぜピッチ外でも熱狂を生み出しているのか?

text by いしかわ ごう photo by Go Ishikawa , Masaru Goto , kawasaki frontale

「一番大事なのは、J1に急いで上がるために無理をすることではない」

――5年、10年のスパンでの活動になりそうですね。

「最初、オカは提携期間を『奈良クラブが川崎フロンターレを負かすまで』と面白いし、夢のあることを言っていた。だけどそれは断りました。

 時代が変われば、人も変わっていくし、オカが奈良クラブを離れるようなことがあった後でも同じように付き合えるかどうかはわからないし、それはフロンターレも同じ。そこで無責任なことは言えない。だから1年ずつの更新で、最初は2015年の1月31日までにしました」

――天野部長の最初のアクションはどうなりそうですか。

「まずは社長なり僕なりが実際に奈良まで行って講演をしたり、むこうの自治体の人たちと話をしたりすることだね。クラブスタッフ、行政、サポーター御一行で川崎に視察に来てもらうのもいいかも。接点が持てれば、次の打開策も見えてくるから。

 気をつけたいのは、僕らは別に先生ではない。奈良クラブは川崎フロンターレの傘下ではないし、それは奈良クラブを応援するサポーターにも失礼。フロンターレだってまだスタジアムが満員になっていないし、まだやらなくてはいけないこともたくさんある。

 そういうこともできていないのに、偉そうに教えるなんておこがましい。だから、あくまで事例として、何かの参考にしてもらえたらと思っている。だから、サポーターの中心にいる人たちとも話をしたいね。

 フロンターレのサポーターも交えて、鍋でもつつきながら地元話しで盛り上がりたい。街は違えど、自分の街をサッカーで元気にしていきたいという志は一緒ですから」

――天野部長にとっても新しいチャレンジになりますね。

「どうしても今のクラブは、J1にあがることを『目的』にして、先急いでいる感じがする。実際、J1を目指すことは大切。でも一番大事なのは、J1に急いで上がるために無理をすることではなくて、サッカークラブが地域の人たちの生活を長い時間をかけて豊かにすること、週末のホームゲームをワクワクドキドキしながら楽しめる場にすることなんじゃないかな」

――日本の中では、まだそういう考え方があまり浸透していないかもしれませんね。

「アメリカだとMLB以外に『独立リーグ』というのがあって、MLBと比べると予算規模も競技レベルも全然低い。なのに、球場は地域の人たちであふれている。みんな笑顔でワイワイやりながら地元チームを応援している。

 僕はそういう盛り上がりをアメリカ留学時代に体感していたから。自分たちの財産である地域とどう付き合うか。競技レベルは関係ない。地域リーグであっても与えられたスタジアムを満杯にすること。やって意義のあるものにしないとね」

【了】

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