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サッカーから差別がなくなる日は来るか。依然として少ない同性愛カミングアウト

text by 鈴木肇 photo by Hajime Suzuki

同性愛者を受け入れたスウェーデンのクラブ

 ストックホルム・スナイパーズが創設されたのは2003年のことだ。

「2002年の『ゲイゲームズ』(夏季五輪の中間年に開催される同性愛を対象としたスポーツ大会)に参加した選手が集まって、その翌年にアイスホッケーチームとしてクラブを創設しました。それからサッカーやハンドボール、インネバンディ(フロアボール。スウェーデンで人気スポーツのひとつ)に部門を拡大し、今日に至っています。

 会員は約100人で、うちサッカー部門には32名が所属しています。クラブの目的はスポーツの世界を多様化すること、それにセクシュアル・マイノリティのための交流の場をつくることです」とエーク氏は話す。

「セクシュアル・マイノリティのためのクラブ」として立ち上げられたストックホルム・スナイパーズだが、所属しているのは性的マイノリティだけではない。異性愛者も歓迎しているという点でユニークといえる。今日では会員のうち約2割がヘテロセクシュアル(異性愛者)だという。

「幸い、スウェーデンでは一般的にセクシュアル・マイノリティは受け入れられていますが、問題がないわけではありません。同性愛者という理由で社会やグループから締め出されるという事例もあります。国によってはさらに酷いケースもあるでしょう。それなのに、なぜ私たちも同じことをしなければならないのですか?

 もし異性愛者は入団不可というルールを作ってしまったら、差別する側と同じことになりませんか? 私たちのクラブはセクシュアル・マイノリティのためのクラブですが、入団したい人は性的指向に関係なく歓迎しています」

 米国の調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が45ヶ国の国民を対象として2007年に実施したアンケート「同性愛は社会に受け入れられるべきか?」によると、スウェーデンにおいては86%が「はい」と回答。これは対象国のなかで最も大きい数字だ。

 エーク氏も「概して、スウェーデンでは当局やメディアがセクシュアル・マイノリティに対してオープンです。この国で生まれ育って幸せかもしれないですね」と語っている。だが、この開放性はすべての社会において当てはまるわけではない。無論、サッカーの世界においてもそうだ。

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