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サッカーから差別がなくなる日は来るか。依然として少ない同性愛カミングアウト

text by 鈴木肇 photo by Hajime Suzuki

「告白することは私の使命」(ラピノー)

 同性愛者であるという理由で自らのキャリアを狂わされた選手や関係者もいる。フランスのアマチュアクラブ、FCショズに所属していたヨアン・ルメールは2010年8月、ゲイであるという理由でクラブを解雇された。

 トルコでは、10年以上にわたり地方リーグで審判を務めてきたハリル・イブラヒム・ディンクダグ氏が2009年8月、やはりゲイであるために審判ライセンスの更新を拒否されたといわれている。このように、性的指向による差別は看過できない問題なのである。

 サッカーとセクシュアル・マイノリティに関連したニュースとして記憶に新しいのが、なでしこジャパンと死闘を繰り広げた米国女子代表ミーガン・ラピノーのカミングアウトだろう。

 同選手は昨年のロンドン五輪前、米国の同性愛カルチャー誌『Out』においてレズビアンであることを公表。オーストラリア女子代表のサラ・ウォルシュと3年間交際していたと述べ、「スポーツ界にはまだ多くの同性愛者がいる。尊重してもらうためにも、告白することは私の使命」と語った。

 ラピノーのみならず、自らの性的指向をカミングアウトする女性選手や指導者は他にもいる。前米国女子代表監督で、昨年秋に母国スウェーデン女子代表の新監督に就任したピーア・スンドハーゲは2010年1月、スウェーデンのテレビ局『TV4』の番組内で、レズビアンであることをカミングアウト。

 同じくスウェーデンでは、国内女子最優秀選手賞を2度受賞し、2004年のアテネ五輪で日本とも対戦したヴィクトリア・スヴェンソンが2008年7月にレズビアンであることを公表。現在は「妻」と暮らしている。

 ドイツでは、代表GKのウーズラ・ホールが2010年6月にパートナーのカリナと結婚。日本では、1990年代に代表選手としてプレーした水間百合子が、自らの半生を綴った著書『女に生まれて男で生きて』(河出書房新社)で性同一性障害であることを明らかにしている。

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