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サッカーから差別がなくなる日は来るか。依然として少ない同性愛カミングアウト

text by 鈴木肇 photo by Hajime Suzuki

周囲の理解が得られた選手も

 カミングアウトした2人目の選手はスウェーデンから生まれた。同国ディビジョン1(3部リーグに相当)のウートシクテンBKに所属するアントン・ヒセーンという選手だ。

 かつてイングランドのリバプールやイタリアのフィオレンティーナなどで活躍したグレンを父に、アレクサンデルとトビアスという2人のサッカー選手を兄に持つというサッカー一家に生まれた22歳の若者は2011年3月、スウェーデンのサッカー雑誌『オフサイド』2011年第2号でゲイであることを公表。

 このカミングアウトは欧州を中心にセンセーションを起こし、ヒセーンのもとには国内外から取材やインタビューが殺到。彼は一躍時の人となった。

 ヒセーンがファシャヌと決定的に異なるのは、周囲の理解を得ている点だ。ヒセーンはスウェーデンのセクシュアル・マイノリティ向け雑誌『QX』のインタビューにおいて、カミングアウト後も友人やチームメートは変わることなく接してくれるとコメント。

 またスウェーデン国内のみならず北米や南米からも励ましや感謝の手紙が数百通も届いており、ゲイであることを否定的に受け止めているレターはわずか1通のみだという。

 女子に比べて男子がカミングアウトした事例ははるかに少ない。ではその理由は何だろうか。ゲイよりもレズビアンのほうが多い、というわけではないと思う。あくまでも推定値ではあるが、世界のあらゆる地域と時代において、男女ともに人口の約3~5%が同性愛者であると言われている。

 例えるならば、学年クラスのうちひとりが同性愛者という計算だ。そう考えた場合、男子よりも女子のほうが多いのではなく、何らかの事情があって男子はカミングアウトできないと捉えることができる。

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