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日本代表 10年前

キャプテン・長谷部誠が真のリーダーになった日

text by 元川悦子 photo by Kenzaburo Matsuoka

「とにかく諦めないってことをみんなで言い合ってやってました」

 最大の山場だったのは21日の準々決勝、カタールとの大一番だ。吉田麻也が退場し、相手に2度も先行され、主審も日本不利のジャッジを連発する苦しい流れの中、長谷部は「諦めずに戦おう」「顔を上げよう」と声を枯らして叫び続けた。

 そして2-2で迎えた後半終了間際、長谷部のシュート性のボールがペナルティエリア内に侵入した香川に渡り、GKと1対1に。香川はDFにつぶされたが、こぼれ球に詰めた伊野波がゴール。10人の状況で3-2の劇的勝利を収めた。

「とにかく諦めないってことをみんなで言い合ってやってました。勝因はそれに尽きると思います。2-1になった時、心折れそうになったけど、そこからみんなで盛り返した。お互い励ましあってやったんで、気持ちの部分が一番じゃないかな。みんな下向いちゃった部分があったけど、とにかく顔上げて、もうプレーしようとみんなに言いました。精神的に強くなったんじゃないかと思いますね。

 最後の場面は、まずは守備をしっかりして、3点目の自分のパスもそうだけど、イチかバチかの賭けだけど、そこで勝負しようって思ってやってました。真司が見えたんで、ボールが来る前にもうあそこに出そうと。

 強いパスだったけど、真司がうまくトラップしてくれて点につながってよかったです。最後に伊野波がなんであそこにいたのか、僕は分からない(笑)。それまでもベンチからは『行くな』って指示が出ていて、僕もそう言ってたんですけど、それなのにあそこにいたんでビックリしましたね。あいつの気持ちもあったんだろうけど」と長谷部は伊野波のサプライズを嬉しそうに語っていた。

 この関門を乗り越え、さらに25日の準決勝・韓国戦をPK戦の末に勝ちきったことで、日本は逞しさを増した。

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