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殴り続けた監督、現役Jリーガーも加害者の一人。暴力が横行する高校サッカーの部活動

text by 加部究 photo by Kenzaburo Matsuoka

下級生を暴行していた“王様”は現在Jリーガー

 1学年上にはBと同じJクラブ出身の先輩もいたが、上級生にいじめ抜かれて退学している。中学時代に国立競技場でプレーをした経験のある先輩は、客観的に同学年では並外れた技術水準を備えていた。

 ところが逆にエリートコースを歩んで来た経歴が、手をつけられない暴行を続ける王様気分の上級生を刺激した。校内で“王様”には誰も口出しができず、監督も指示を出す時は他の選手を迂回した。

 ちなみに“王様”は現役Jリーガーである。

 Bがそんな惨状を知ったのは、既に進路を決めた後だった。

「先輩は僕よりずっと酷い目にあっていたそうです。上級生と同じ屋根の下で寮生活だったので、まったく逃げ場がありませんからね」

 退部して「サッカーは、もういいや…」と思った。

「フットボールチャンネル」でアンケートを募ると、Bの10年ほど先輩に当たるCからも回答が届いた。

 両者の時代で監督は異なるが、どうやら部内の体質に変化はない。

「高校生の頃からサッカー雑誌を読むのが好きでした。海外の選手のインタビューを読むと、サッカーは楽しむもの、というフレーズが出てきます。でも高校では1日たりとも楽しいと感じたことがありません。自由な発想を表現できたこともないし、部活はつまらない、サッカーはきついものと刻み込まれた感じです」

 Cが受けた仕打ちは、陰湿ないじめそのものだ。

「入学してから約1ヶ月間は、新入生を追い込むために“しぼり”が行われます。指導者がきついメニューを課すだけでなく、上級生や同級生を使って、ついて来られない子を脅させるなどで精神的にも追い込むわけです。僕は同じクラスの仲の良かったヤツにまで追い込まれ、すっかり人間不信に陥りました」

 結局Cも1年時に部活を辞めた。

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