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日本代表 10年前

「サッカー人生を10年前からやり直したい」。海外組の意識の高さに大きな衝撃を受けた前田遼一

text by 元川悦子 photo by Asuka Kudo / Football Channel

「目標にしているところが自分と違いすぎる」

 それでもこの大会では6試合全てに先発出場。ザック監督にとっての1トップのファーストチョイスになった。そのことだけは本人も少なからず前進を感じた様子だった。

「ジュビロで2010、2011と2年連続でシーズン通して出れて、ちょっとはコンスタントに戦える選手になれたんで、今大会で試合に出られるようになったのかなと。でもそれはサッカー選手として当たり前のこと。これを続けて、さらに高いレベルの選手になれるように頑張りたいと思います。

 僕自身、南アへ行けなかった悔しさはあります。だけど、ザックさんは大会通して使ってくれたし、信頼を感じる。その分、もっと実力をつけたいなとも強く感じました。オーストラリア戦を振り返っても、止まってボールを受けることがすごい多かった。

 自分の中でもっと予測しながらプレーできれば、ポスト役としてももっと有効な動きができる。それもこれからの自分の課題だと思います」

 30歳近くなって新たなモチベーションを抱くことができたのも、日本代表で本田や香川、長友佑都ら年下の海外組と再び一緒にプレーしたことが大きい。前田はこんな言葉を漏らしている。

「自分のサッカー人生を10年前からもう1回やり直したい。それができたら、本田や香川たちみたいに海外へ行くことを目指して高い意識を持ってプレーできたはず。彼らを見ていると目標にしているところが自分と違いすぎる。10年前の僕にはそんなことは考えられなかった。彼らはホントにすごい」と。

 世界トップを本気で狙っている若い世代から大きな刺激を受け、自分を高めて行こうと誓った前田遼一。その後もレギュラーであり続けたが、2013年は厳しい一年となった。所属するジュビロはJ2へと降格し、自身も代表1トップの座を柿谷や大迫といった若きタレントに明け渡した。

 果たして前田はもう一度、上昇気流に乗ることが出来るだろうか。W杯まであと半年。ザックが信頼を寄せた男への門戸は、まだ開かれている。

【了】

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