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NHKですら事実を歪曲。誤訳・過剰演出が横行するサッカー番組、偏向報道の真実

昨年12月、W杯の組み合わせ抽選会が行われた。日本の対戦国も決定し、対戦国についての報道も見られるようになった。1月10日発売、最新号の『サッカー批評issue66』(双葉社)では、テレビ報道の現場を知る著者が、報道現場の知られざる内実を明らかにしている。その一部を抜粋して紹介する。

text by 長束恭行 photo by Getty Images

【サッカー批評issue66】掲載

視聴者をミスリードする番組制作。誤訳のオンパレード

【字幕】「クロアチアにはどうしても勝ちたかった。(僕は)セルビア人だから」

 復讐のためにもセルビア代表を目指す13歳のサッカー少年は、ドローに終わったW杯予選を観戦した後、日本のカメラに向かって語り出す。90年代の戦争でクロアチアを追われたセルビア人一家は月収2万円の家計をやりくりし、息子のために4000円のチケットを準備していた…。

 これは昨年9月にNHK・BSで放映されたドキュメンタリー「W杯予選の最も熱い日」の一コマだ。

 番組を見終わった後、
「戦争が終わってもなお、民族間の憎しみは消えないというのか」
「日本人には想像がつかない。サッカーを超越した世界だ」
 と驚いたあなたは騙されている。

 制作班が準備したチケット(最高額でも2000円だった)で父や弟と最前列に座った少年の夢は、バルセロナやレアル、マンチェスターでプレーすること。字幕ではなく彼のセルビア語を聴けば、試合後の感想は正しくはこうだ。

「勝利を期待していたけど、この結果(1-1)で良かったよ。彼ら(クロアチア)に負けなかっただけでもね」
 このドキュメンタリーは、全編に渡って視聴者をミスリードする誤訳と編集、ナレーションで塗りたくられていた。予選順位がほぼ確定し、両国でも関心度の低い試合なのに、ひたすら民族対立を軸に煽り続けたのだ。

(編注:9月7日、セルビア対クロアチアの前までの欧州予選A組の勝ち点は、1位:ベルギー(勝ち点19)、2位:クロアチア(勝ち点16)、3位:セルビア(勝ち点7)、4位:ウェールズ(勝ち点6)、5位スコットランド(勝ち点5)、6位:マケドニア(勝ち点4))

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