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日本代表 10年前

ザックジャパン回想録。本田の代役だった柏木陽介「ホンディより勝る部分ある。でも出せなかった」

text by 元川悦子 photo by Getty Images , Asuka Kudo / Football Channel

「『本田がいないとあかん』と言われたくない」

 その後は浦和での浮き沈みもあってザックジャパンにコンスタントに呼ばれなかっただけに、本田と中村憲剛不在の北朝鮮・ウズベキスタン2連戦は代表定着への絶好のチャンスだった。「トップ下で先発の可能性? 全然意識しません」とあえて平静を装ってはいたが、自身の中では力が入っていたはずだ。

「アジアカップのサウジ戦でもホンディ(本田)が出れなかったサウジ戦で出たけど、あの時はモロ緊張していた。でも試合が進んでいくごとにできるようにはなったし、周りがよければ自分も生かされると思った。

 チームを信じて自分を信じてプレーしていけばいい。『本田がいないとあかん』と言われたくないし、それはサブの選手がみんな思ってること。誰が出てもチームのためにやれればいい」と彼は改めて己を奮い立たせた。

 とはいえ、フィンケ監督率いる浦和ではトップ下でプレーする機会が少なかったため、本人としても戸惑いは少なからずあっただろう。荒れた気象条件やスリッピーなピッチもマイナスに作用したのか、この日の柏木は思うようにボールが収まらない。

 彼のところでタメが作れないと、香川真司と岡崎慎司が中へ入っていく時間的余裕が生まれない。中盤のバタバタ感は否めなかった。

 それでも柏木は自ら状況を変えようと献身的に走って守備に行き、ゴールに向かう意欲を見せる。しかし前半21分と24分のシュートチャンスをモノにできず、空回りしてしまう。

 ザッケローニ監督は後半も彼を引っ張り、流れが変わるか見極めようとしていたが、後半開始15分が過ぎたところで清武弘嗣との交代を命じる。最終的に後半ロスタイムに吉田麻也の劇的決勝ゴールが飛び出し、日本はホームで辛くも勝ち点3を手にしたが、柏木のアピールは失敗に終わった。

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