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2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第5回 山浦新(慶応大3年)

眩い光を放った東京ヴェルディユースの92年組。プロに進んだ者もいれば、大学に進んだ者もいる。彼らの足跡を追う。

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お金を稼ぐって、大変なんだと身に沁みた

2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第5回 山浦新(慶応大3年)
山浦新(慶応大3年)。下田サッカー場にて【写真:海江田哲朗】

「オフに入ってから、ひまな時間がありすぎて。本を読むくらいしかやることがない。伊坂幸太郎の小説を立て続けに何冊か読んでます。最近、電子書籍に移行したんですよ。以前は抵抗があったんですが、思ったより大丈夫でした」

 山浦新(慶応大3年)は、カフェオレを静かにすすった。1月10日、場所は日吉駅からほど近い喫茶『まりも』。昭和の風情を色濃く残す、学生街の喫茶店だ。

「12月1日から、周りが就活を本格的に始めたからなおさらですね」

 慶應義塾体育会ソッカー部の同期は40名弱。そのなかで、就活をしないと決めたのは山浦を含めて2名しかいない。総合政策学部に籍を置き、単位はあらかた取り終えた。湘南藤沢キャンパスに通うのは週1程度でいい。

 余った時間を有効活用すべく、派遣会社に登録し、人生初のアルバイトを経験した。イベントの設営や警備スタッフなど、5日ほど働いた。日給は8000円から1万円。実働時間が短く、こんなにラクしてお金をもらっていいのだろうかと思った。

 だが、その考えはデータ入力の仕事で打ち砕かれる。密閉された空間で、1200枚のアンケートをひたすらパソコンに打ち込んだ。隣の人と会話できるような雰囲気ではない。カタカタカタカタ、キーボードを叩く音だけが響く。お金を稼ぐって、大変なんだと身に沁みた。

「自分も就活をするつもりでいました。3年までに関東選抜に入れなければ、違う道へ進もうと決めていた。そう決めてはいたけれど迷いもあって……。そんなときでした、リョウ(渋谷亮・中央大3年)の記事を読んだのは」

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