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香川真司 10年前

香川は本当に守備が苦手なのか? ドルトムントとのスタイルの違いから見えてくるマンUでの不遇の要因

text by 海老沢純一 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Ryota Harada

孤立する“ヘビーメタラー”香川

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香川は「ゲーゲンプレッシングの申し子」【写真:原田亮太】

 香川真司は、ポッゼッションサッカーにおけるゲームメーカーではなく、ショートカウンターで生きるセカンドアタッカーであり、まさにクロップ監督による「ゲーゲンプレッシングの申し子」なのだ。

 そして、香川が現在プレーするチーム、すなわちマンチェスター・ユナイテッドと日本代表は、このゲーゲンプレッシングを取り入れていない、またはできないため、自らの能力をチームにおいて発揮できていないと言える。

 サッカーは、ポゼッション率を競う競技ではなく得点数を競う競技。70%や80%のポゼッッション率で圧倒するサッカーも素晴らしいが、時に退屈に映ることもある。素早いカウンターで一気にゴールに迫るサッカーは、ハインテンションでスリリングなものだ。

 クロップ監督によると、ポゼッションサッカーはオーケストラのように優雅で美しいが、ゲーゲンプレッシングは泥臭いヘビーメタルのようなもの。

 ヘッドバンキングでテンションを最高潮にする人もいれば、壮大なクラシックにスタンディングオベーションを送る人もいる。つまり、「どちらにシンパシーを感じるか」ということであって、「どちらの方が素晴らしいか」ということではない。

 香川真司は、このどちらでもない世界的な大御所ブリットポップグループに加入してしまったヘビーメタラーのような存在なのかもしれない。

【了】

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