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Jリーグ 10年前

Jクラブは地元に勝利以外をもたらしているか? クラブが本当に地域に愛され、必要とされるために

Jリーグは発足から20年で急速な発展を遂げ、今では50ものJクラブがある。地域に愛されているクラブがある一方で、必ずしもそうではないクラブもある。ザスパクサツ群馬を事例に地域とクラブがどうあるべきかを考察する。

text by 小澤亮太 photo by Kenzaburo Matsuoka

ファスト風土化進む前橋

Jクラブは地元に勝利以外をもたらしているか? クラブが本当に地域に愛され、必要とされるために
自治体とJクラブの関係とは?【写真:松岡健三郎】

 地域ブランド調査2013で44位の群馬県の県庁所在地前橋市。社会デザイン研究者・三浦展が導入した「ファスト風土」の典型的な都市である(編注:地方が郊外化し、地域の独自性を失ってしまったこと)。

 中心街はシャッター通り、中心街から車を走らせれば、ロードサイドにはファストフード店、コンビニエンスストアが立ち並び、郊外には大型ショッピングセンター。そんな地方都市にホームグラウンドを置くのが、ザスパクサツ群馬だ。

 昨年名前を変更し、群馬全県をホームタウンとしたザスパ。しかし、前橋市を中心として群馬県にザスパの「匂い」は全くと言っていいほど感じられない。

 ザスパクサツ群馬は平成26年1月決算での債務超過見込額の約6000万円の解消と本年度の黒字に6月までに確たる目途が立たなければ、クラブライセンスが剥奪され、Jリーグから退会しなければならない(クラブ公式サイトから抜粋)というクラブ状況にある。シーズン開幕直前には社長も変わった。

 そんなザスパを事例に、全国的に「ファスト風土化」が進み、地方都市が画一化されていく中、主に地方都市にホームグラウンドを置くJクラブは何を都市にもたらすことが出来るのかを考えていきたい。

 まずはJクラブと自治体、地域との関係を確認しておきたい。まずは自治体とJクラブの関係だ。分かりやすいのはホームグラウンドについてだ。「Jリーグ準加盟規程」の第2条[準加盟の条件]第2項第2号には「予定または決定したホームタウンが、当該クラブのJリーグ入会を応援するとともに、Jリーグ入会に向けた取り組みを支援する姿勢を、文書で具体的に示していること」とある。

 また、第3項ではホームスタジアムに関する規程があり、そこではクラブライセンスの基準に合わせたスタジアム整備(主にスタンド改修)をする意思をホームスタジアムの所有者が示しているかどうかが記述されている。

 多くのJクラブはホームスタジアムを自治体が所有する陸上競技場とするが、その場合所有者は当然自治体となり、自治体にホームスタジアムをクラブライセンスに合わせたものにする整備の意思があるかが必要となる。

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