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Jリーグ 10年前

虚無感に包まれた埼玉スタジアム。無観客試合によって再認識したJリーグの魅力と進むべき道

text by 桑村健太 photo by Asuka Kudo / Football Channel

幕を開けるJリーグ史上最も静かな一戦

 スタジアム内の光景は、テレビで紹介された通りである。浦和のクラブカラーであるレッドを想起させる配色はまるでなく、埼玉スタジアムの座席を彩る緑と青が剥き出しになっていた。LEDの広告看板は撤去され、スタジアムの音楽やアナウンスも自粛。

 このスタジアムを訪れた人なら誰しも味わったことのある、あの圧倒されるような声援などもちろんなかった。そこは、ただひたすら無味乾燥な世界であった。こうして、選手たちの鼓舞する声と上空を旋回するヘリの音だけがこだまする中、おそらくJリーグ史上最も静かな一戦が幕を開けた。

 試合は早々に動く。前半19分、清水のショートコーナーからのクロスがファーサイドで待ち構えていた六平光成へとわたり、シュート。これをGK西川周作が防ぐも、こぼれ球を長澤駿がつめて清水が先制に成功する。

 負けられない浦和は、後半にたたみかける。同31分、後半開始から投入された関根貴大が右サイドを突破しクロス。これを原口元気が中で押し込みタイスコアに戻す。この日プロデビューとなった関根は試合後、「プロデビューが無観客試合だった選手はいないと思う」と苦笑していた。

 この後も浦和は原口を中心に清水ゴールへと迫るも、試合は1-1でのまま終了。普段であればサポーターのところに挨拶へと向かう選手たちだが、試合後はすぐさまロッカールームへと引き返していた。こういったシーンを見ていても、結局試合終了までどこか不思議な気持ちを拭い去ることはできなかった。

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