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まるで“アル中”、代表弱体化の要因か。サッカーの母国イングランドの常軌を逸した飲酒文化

巨万の富を生み出すプレミアリーグ。世界最高のリーグとも言えるが、華やかな話題ばかりではない。母国のサッカー選手による過度な飲酒はたびたび問題を起こし、世間を賑わせている。イングランドに未だ残っているのは、人生させも破滅させてしまうほどの異常な飲酒文化だ。

text by 斎藤史隆 photo by Getty Images , Kazhito Yamada / Kaz Photography

よくある“酩酊者の奇行”。しかしその正体は…

 イングランド・サッカー界は絶好調だ。スタジアムは大半の試合で観客に埋め尽くされる。今季から始まる3年間のテレビ放映権料はプレミアリーグに合計5億5000万ポンド(約8200億円)もの巨額の富をもたらす。

「世界最高のリーグ」。リーグ関係者や一部メディアはそう胸を張る。だが、ここまでに到達する間、主役となる選手はピッチ内外でさまざまな影を引きずってきたことも忘れてはならない。

 7月上旬、ロンドン郊外の鉄道駅の構内で一人の中年男性が逮捕された。警察は46歳の容疑者が泥酔状態で、身柄の拘束に激しく抵抗したことを明らかにした上で、一晩拘留した後に釈放したと発表した。

 おそらくイングランド国内でも1日に無数に発生している“酩酊者の奇行”だろう。しかし、数日後にはこの事件はマスコミを騒がせることになった。理由はひとつ。逮捕された男性の名前がポール・ガスコインだったからだ。

 1980年代はイングランド・サッカー界にとって暗黒の時代だった。フーリガン問題などが原因で、各クラブは欧州カップ戦からの出場停止処分を受けていた。国内でも全国中継された試合中にフーリガン同士が乱闘する映像が茶の間に流れたこともあった。

 サッカーの母国が復活の契機をつかんだのはイタリアで開催された90年W杯だった。イングランド代表は準決勝でドイツにPK戦で敗れたとはいえ、久しぶりに国民を正当な形で熱狂させることに成功した。

 そのチームの中心になったのは間違いなくガスコインだった。茶目っ気たっぷりな言動、ドイツに敗れた後に流した涙は共感を呼び、一躍時代の寵児になった。

 プレミアリーグはW杯から2年後の92年に発足。どん底から這い上がる過程で生まれた新リーグはその後成長の一途をたどり、世界屈指の地位を築いたが、ガスコインの貢献がなければイングランド・サッカー界の復権にはもう少し時間がかかったのではないかというのが国内での見方だ。

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