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マンUが捨て去った「長期展望」の伝統。モイーズが犯したピッチでの失敗、選手の離心を招いた拙い人心掌握術

マンチェスター・ユナイテッドがデイビッド・モイーズ監督をわずか10ヵ月で解任。ピッチ内外に及んだ失敗は短命に値するものだった。一方で、クラブが誇りを持っていた「長期展望」の伝統を捨て去ったことも事実だ。

text by 山中忍 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Getty Images

わずか10ヵ月で解雇。プレミア改名後最低ポイント確定、失墜の責任は選手にも

マンUが捨て去った「長期展望」の伝統。モイーズが犯したピッチでの失敗、選手の離心を招いた拙い人心掌握術
デイビッド・モイーズ解雇は異例の事態【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 マンチェスター・ユナイテッドが、通算20回目のリーグ優勝を決めたのは昨年4月22日。サー・アレックス・ファーガソンは、監督27年目のユナイテッドで13度目のプレミアリーグ優勝を果たした。

 それから1年、勇退した名将自ら見立てた後継者は、6年契約での就任10ヵ月目で監督の職を失った。ファーガソン自身が就任直後の3年連続無冠を生き延び、「長期展望」の伝統を誇るユナイテッドにとって、さる22日のデイビッド・モイーズ解雇は異例の事態だ。

 最後までチーム再建という「時間の要る大仕事が始まったばかり」と語り、前途への「希望」という言葉を繰り返したモイーズにすれば予想外の悲劇だ。但し、さほど同情の余地はない。理由は、解雇翌日の声明文で「過渡期とはいえ期待にそえなかった」と本人も認めている。

 解雇時点でのリーグ順位は、優勝はもちろん、トップ4入りも不可能な7位。13位に終わった1990年以来の最低順位だ。92年に「プレミア」と改名したトップリーグでの自己最低ポイントが確定してもいた。

 もっとも、昨季王者の失墜は選手にも責任がある。巷ではベストメンバーすら把握できていなかったと言われるが、スタメン当落線上の選手たちがアピールし切れなかった事実も否めない。日本期待の香川真司もその1人。

 ベンチ増には現地のファンも不満を示したが、先発の機会を得た計21試合で本当に存在感を放った試合は片手で数えられる。その香川も先発した20日のエヴァートン戦(0-2)は、今季最悪のチームパフォーマンスだった。

 しかし、よりにもよってモイーズの前任地での一戦で自軍に覇気がなかった原因は指揮官にある。主要タイトル獲得の「過去」を持たない新監督が、優勝慣れしている新任地で認められるには、「今後」への取り組みで説得するしかない。

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