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ドイツとバルサの融合、ペップによる王者バイエルンの変革。戦術の鍵“偽2番”“偽5番”とは?

text by 清水英斗 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

「ボールに触ることが“楽しい”」。ペップの哲学とは?

 ペップの哲学は明確だ。普段はメディアの単独インタビューを受けないペップだが、唯一、バイエルン・マガジンには例外的に応じ、次のような言葉を述べている。

「はっきりしているのは、私が監督を務めるクラブでは、常にボールを保持したいということです。どうして私がサッカー選手になったと思いますか? ボールを使ってプレーするためです。監督として、私はそのためだけにトレーニングのすべてを構築します。

 私が確信しているのは、サッカー選手は“ボールがうまく回っている”という実感があれば、24時間、疲れることなく走り続けられるということ。そういうときは、選手にとってプレーそのものが楽しいからです」

 バイエルンは、昨季のすべての栄冠を手にしたチャンピオンである。うまくいっているものを変革するのは、ある意味ではどん底のチームを復活させること以上に難しい。

 しかし、ペップは「ボールを使ってプレーするために、サッカー選手になった。ボールに触ることが“楽しい”」というサッカー少年のようなピュアな価値観を持ち込み、局面に“勝利すること”が何よりも重視されるドイツのメンタリティーに、新たな刺激を与えている。

 タイトル以上に追い求めるものがある。ファンを楽しませ、そして、自らがサッカー選手であることを楽しむ。王者バイエルンに、自らの哲学を納得させるという、最初の試練をペップはクリアした。それは何よりも試合内容が証明している。

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