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ドイツとバルサの融合、ペップによる王者バイエルンの変革。戦術の鍵“偽2番”“偽5番”とは?

text by 清水英斗 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

バイエルンとバルセロナの長所を融合させたペップ

ドイツとバルサの融合、ペップによる王者バイエルンの変革。戦術の鍵“偽2番”“偽5番”とは?
グアルディオラはワントップのマンジュキッチを中盤に下げずにプレーさせている【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 他方、バルセロナの場合は左サイド、中央、右サイドの攻撃バランスは、約33%ずつでほぼ均等。メッシ、イニエスタ、シャビ、ブスケッツなどチームで最も高いスキルを持つ選手は中央でプレーし、サイドからのクロスやセットプレーよりも、スルーパスなどの中央突破でゴールする割合のほうが多い。

 アタッキングサードは多くの場合で数的不利を強いられ、スペースも削られる厳しいエリアだ。打開するには個人のストロングポイントを出していく必要があり、このようなフィニッシュパターンは選手そのものを入れ替えない限り、大きく変えることは難しい。

 マンジュキッチの正統派センターFWとしての得点力、そしてリベリーやロッベンのサイド突破力といった長所を殺さずにそのまま残し、中盤に人を足すオーガナイズについては、ハインケス時代のサイド攻撃を支えた両SBのポゼッションスキルの高さを生かす。

 おそらくペップのアイデアの中には、ゲッツェやミュラーをメッシに見立てたゼロトップをそのまま適用するプランもあったはず。しかし、それはあまり採用せず、「バイエルンとバルセロナの長所を融合させる」という最大公約数を取った。それが現在のバイエルンと言える。

 今季のチャンピオンズリーグ(CL)において、バルセロナはベスト8で敗退してしまったため、バイエルンの対戦は実現しなかった。しかし、常に欧州王者を狙う両者だけに、来シーズンに激突する可能性は十分にあるだろう。そして、それが実現すれば世界中が注目するはずだ。

 ブンデスリーガ前半戦で71.1%のポゼッション率を記録したバイエルンは、リーガ前半戦で66.9%を記録したバルセロナを上回り、欧州主要リーグで最も高いポゼッション率を誇るチームとなった。

 もちろん、これには対戦相手の影響もある。CLでは両チーム共に約63%で並んでいることを考えれば、ポゼッション率はほぼ同等と考えても良い。

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