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Jリーグ 10年前

サンフレッチェ広島のブレないマネジメントに迫る。“予算中位”でなぜ結果を出せるのか?

text by 中野和也 photo by Kenzaburo Matsuoka ,Yasuhiro Suzuki

経営再建の中で大抜擢の監督人事

サンフレッチェ広島のブレないマネジメントに迫る。“予算中位”でなぜ結果を出せるのか?
森保一監督【写真:松岡健三郎】

 2011年、クラブはJリーグクラブライセンス制度の導入決定を受け、債務超過危機の解消のため減資を決断する。当然、経営再建のプログラムを組む必要があり、結果としてペトロヴィッチ監督の契約を延長することができなくなった。

「経営状況をしっかりと説明すれば、ミシャ(ペトロヴィッチ)も年俸ダウンに納得してくれたかもしれない。しかしそれは、(ACL出場やナビスコ杯準優勝、3年連続入賞と)結果を出している監督に対しての対応ではない」(久保会長)

 クラブとしての決断を通達された名将は、涙ながらに選手たちに別れを告げ、広島を去った。問題は、彼の後任である。

 ペトロヴィッチ監督の戦術を受け継ぎ、発展させ、選手たちを一つにまとめあげる「カリスマ」の持ち主が必要だった。白羽の矢は、森保一というかつての「ミスター・サンフレッチェ」に立った。

 この選択もまた、各方面からの批判を受けた。森保はコーチとしてペトロヴィッチの下で学び、新潟や年代別代表を指導したキャリアを持つが、監督として一つのチームを率いた経験はない。

「OB人事では強くなれない。広島は残留争いを余儀なくされる」とジャーナリストから評価されたが、結果はご存知のとおりである。

 久保会長や本谷祐一社長(当時)が森保一を後任に据えた最大の理由は、彼の人間性にある。「彼は年上からも、若い人間からもリスペクトを受ける人物。常に謙虚な姿勢を崩さずにレベルアップに取り組む彼に、後任を任せたい」(本谷前社長)

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