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FIFAもようやく重い腰を上げ…。カタール、W杯買収劇の裏側。誰に、いくらで票を買ったのか?

text by 田村修一 photo by Getty Images

TV局からの大きな反発未だ残る労働問題

 テレビ局との間の調整もある。アメリカのFOXとNBCは、すでに18年と22年の放映権を10億ドルで落札している。これは予想されるFIFAの大会収入の87%に当たる。ところが両局は、冬の同じ時期にNFLとスーパーボウルも放映する。自局の中で、メジャーなスポーツ大会がバッティングしてしまうのである。ある関係者は言う。

「我々は夏の大会の権利を買ったのであって、それを冬に行うのは契約違反だ。根本的な見直しが必要になる」

 さらにカタールには、もうひとつ看過できない問題――外国人労働者の問題がある。CSI(国際労働連盟=世界155ヶ国の1億7500万人の労働者による組合)の調査によると、13年7月4日から8月8日の間に、44人のネパール人労働者――いずれも20歳前後の若者たち――が仕事中の事故や突然の心臓マヒで死亡した。

 同様にドーハのインド大使館も、82人のインド人労働者が13年1月から5月までの間に事故で亡くなったと発表している。この状況が続けば、W杯までに4000人のネパール人が犠牲になるとCSIは警鐘を鳴らす。

 彼らはタコ部屋のような劣悪な環境に身を置き、賃金もしばしばピンハネされる。その様子は9月26日付のガーディアン紙に詳しくレポートされているが、同時に撮影されたビデオは、凄惨な状況をありのままに映し出している。「とても直視できなかった」と、シャンペルは告白している。

 さすがにFIFAも無視できず、この問題を10月の理事会で取り上げた。またカタールも、早急に調査して善処するという。石油と天然ガスが作り上げた、砂漠の黄金郷が抱える暗部である。

「まだまだ明らかにすべき事実はたくさんある」と、レミー・ラコンブFF編集長は言う。

「それらが判断材料として出そろったとき、そしてガルシアの調査報告書が完成したときに、カタールゲートは様相を変えるかもしれない。それにはもっと時間が必要だ」

 カタールゲートはこれからも続く。

【了】

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