バティストンが意識を失う重傷も、主審が見過す
W杯での対ドイツ戦。フランスにとって、これには特別な意味がある。
往年のサッカーファンの心の中で、98年大会の優勝に次いで深い印象を残している試合、それが1982年大会の準決勝だ。アラン・ジレスやミシェル・プラティニを擁する黄金時代で挑んだこの大会では、優勝の期待もかかっていた。
順当に準決勝に進んだ彼らは、そこでドイツと対戦。90分を1-1で終えると、延長戦では早々に2点をとって、フランスが3-1とリードを奪った。ところが試合終了間際に2失点を喫してPK戦へ。その結果、5-4で敗れたのだった。
屈辱の逆転負け。さらに、DFパトリック・バティストンがドイツのGKシューマッハと空中で接触。倒れて意識を失い、前歯を2本折るという重傷を負ったにもかかわらず、主審がファウルすらとらずに見過ごされた。
この一件が黒い影となり、『82年の準決勝、対ドイツ戦』はフランスサッカー界の暗い過去とされている。しかも、次回4年後のメキシコ大会で両者は再び準決勝で顔を合わせ、またしてもフランスが敗れているのだ。
以来W杯で両者の対戦はなく、今回が28年ぶりの“リベンジマッチ”ということで、ラウンド16でナイジェリアを倒し、準々決勝の対戦相手がドイツとわかった瞬間から、メディアは一斉に『因縁の対決!』の話題で持ち切りとなった。
デシャン監督は、試合前日の会見で「選手自身の間には、リベンジしなくてはなどというプレッシャーはない。我々は新たなページを作るだけだ」と熱冷ましに動いた。