なぜ1番・2番ではなく3番が歌われるのか? W杯決勝前に知っておきたいドイツ国歌の謎

大会前からの予想通り、決勝まで上り詰めたドイツ。その強さの秘密は「移民」にあるのでは?とは、よく言われることである。その真偽のほどは置いておこう。ここでは、『フットボールde国歌大合唱!』(東邦出版)の著者がドイツ国歌を通して、現在のドイツ代表を俯瞰してみる。

2014年07月13日(Sun)16時57分配信

text by いとうやまね photo Getty Images
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「団結と正義と自由」の元に…

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メスト・エジル【写真:Getty Images】

 2012年の欧州選手権で、ドイツ国歌を巡って、ちょっとした騒動が起きた。ドイツ代表には、メスト・エジルというトルコ系の選手がいる。高いボールコントロール技術と、広い視野を持つトップ下の選手だ。そのエジルが、国歌斉唱時に歌わなかったとして、物議を醸したのである。

 大衆紙ビルトは、「われわれは十分に愛国的か」との見出しの記事を掲載。ヘッセン州知事は「国歌を歌うのはエチケット。こんな議論をしなければならないこと自体が腹立たしい」と批判した。

 また、往年の名選手のフランツ・ベッケンバウアー氏は、「闘志はキックオフ前からかき立てなければならない」と指摘。「代表監督時代は選手に国歌を歌うよう義務付け、1990年のワールドカップ(W杯)を制した」と語った。

 エジルの言葉を借りれば、「その時はコーランの一節を念じていた」のだそうだ。国際化の時代を迎え、国歌斉唱もその影響を受けつつある。

 現在のドイツ国歌は、『ドイツの歌(Deutschlandlied)』という。この歌が統合ドイツの国歌として正式採用されたのは、わずか20年ほど前のことだ。ただし、原曲が作られたのは200年以上も前、1797年のことである。

 作曲者は、あのヨーゼフ・ハイドン。あまたある国歌の中でも、これほどの大物作曲家を擁しているのは、ドイツとオーストリアくらいだろう。ちなみに、オーストリア国歌はモーツアルト作曲とされている。

 もっとも、ハイドンはドイツ国歌としてこの歌を作ったのではない。神聖ローマ皇帝フランツ2世の誕生日に捧げたものだ。そのため、当時は皇帝を讃える歌詞が付けられていた。「神よフランツ皇帝を守りたまえ、我らの良き皇帝フランツを」といった具合だ。

 曲はオーストリア帝国、オーストリア=ハンガリー帝国の国歌として受け継がれていった。現在のドイツ国歌のメロディーは、元々オーストリア国歌だったことになる。

『ドイツの歌』
団結と 正義と 自由を 
父なる国 ドイツへ  
これに向かいて 我ら励まん  
兄弟のごとく 
心一つに手を採り合いて  
団結と 正義と 自由こそは 幸せの証  
幸福の輝きの元 栄えあれ  
栄えよドイツ 父なる国よ

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