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ドイツを優勝に導いた理想と現実の“バランス”。アルゼンチンを上回った“総合力”

ブラジルW杯決勝は、延長線にもつれこむ接戦となったが、ドイツがゲッツェのゴールで競り勝った。メッシという稀代の天才を擁するアルゼンチンを突き放すことができたのはなぜか? そして大会を通じて見えたドイツの強さとは?

text by 本田千尋 photo by Getty Images

サプライズ先発・クラマーを警戒したマスチェラーノ

 113分、マラカナンでマリオ・ゲッツェは伝説となった。

 2014年7月13日、ドイツ代表はリオデジャネイロの地でアルゼンチン代表と決勝を戦う。

ドイツを優勝に導いた理想と現実の“バランス”。アルゼンチンを上回った“総合力”
マリオ・ゲッツェ【写真:Getty Images】

 スターティング・メンバーは、GKノイアー、右SBラーム、CBはボアテングとフンメルス、左SBヘーヴェデス、シュバインシュタイガー、クロースのダブルボランチに、2列目はエジル、クラマー、ミュラー、そしてワントップにクローゼだ。試合前のトレーニングにてケディラがふくらはぎを負傷したため、急遽クラマーが先発することとなった。

 アルゼンチン代表は、左SBロホ、ガライとデミチェリスのCB、右SBサバレタの最終ラインに、ビリア、マスチェラーノ、ペレスのトリプルボランチが並ぶ。両CBの前、中盤の底のマスチェラーノを中心として、固いディフェンスを構築した。攻撃のタクトは、メッシに託される。

 アルゼンチン代表が手堅くディフェンスから入ったため、必然的にドイツ代表が主導権を握り、パス・スタイルでじっくりと攻め立てた。急遽プレーすることとなったクラマーは、マスチェラーノに余計な警戒を抱かせたかもしれない。

 前寄りにポジションを取ったクラマーは、マスチェラーノを少し引きつける格好となった。クラマーというくびきが打ち込まれたアルゼンチン代表のトリプルボランチの前方で、ドイツ代表は、クロース、シュバインシュタイガーのダブルボランチを軸としてパスを交換していく。

 しかしケディラが不在であったためか、攻撃はどこかぎこちないものとなった。後方と前方の橋渡し役がおらず、全体的に間延びしてしまう。もちろんドイツ代表のディフェンス陣にどこかメッシを恐れる気持ちもあっただろう。

 アルゼンチン代表はときおりメッシを中心に反撃する。20分には、クロースのヘディングでの戻しがイグアインにそのまま渡ってしまい、ノイアーとの1対1という決定的な場面を招いた。たまに顔を覗かせる危険な場面が、守備陣の意識を後方へと向ける。

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