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「自分たちのサッカー」とは何だったのか? ジーコ時代との相似点と日本代表を巡る8年周期の問題点

text by 宇都宮徹壱 photo by Getty Images

8年周期で一回りした日本代表を巡る状況

 では2大会分、すなわち8年というインターバルで見た場合はどうだろうか。当然、そこには成功と失敗というバイオリズムを見て取ることができよう。2大会、3大会続けて一定以上の好成績を残せるチームというものは、ブラジルやドイツくらいで、フランスやイタリアやスペインといった最近の優勝国は、いずれもその後はグループリーグ敗退を経験している。

 日本の場合、今大会で5回目のW杯出場だが、98年→GL敗退、02年→ベスト16、06年GL敗退、10年→ベスト16、14年→GL敗退、と見事なまでに8年周期で成功と失敗を繰り返してきたことがわかる。

 06年大会と今大会が、グループリーグ3試合の内容やスコアで酷似していたのは単なる偶然であろうが、一方でナショナルチームのバイオリズムや協会の方針、さらには世論やメディアの反応といったものに関しても、8年くらいの周期で一回りしているように感じられる。

 最もわかりやすいのが、本大会直前の世の中の空気感である。今大会の場合、ゴールデンウィーク以前は、それほど日本代表やW杯に関する情報は加熱することはなかった。ところが5月12日の最終メンバー発表を境に、その情報量は一気に何倍にも増えた。TVの特番や雑誌の特集、代表選手やザッケローニをフューチャーしたCMも多数見られるようになった。

 そうしたメディア露出自体は、8年前のジーコ時代だけでなく、12年前のフィリップ・トルシエ監督時代にも見られた現象である。ただ、時代の空気感として、8年前と今回とで非常に特徴的だったのが「根拠なき自信」である。

「ベスト8は間違いない」「神さま(=ジーコ)が奇跡を起こす!」「ブラジルにだって勝てる!」というような、今から思えば随分と突拍子もないフレーズは、8年前にはメディアやネット上で流布されていたのである。これは今大会における「目標は優勝!」とか「自分たちのサッカーができれば勝てる」に相通じるものがある。

 根拠なき自信の根拠となっていたのは、おそらく前回大会のベスト16という成績が多分に影響していたと思われる。「前回はベスト16だったから、今回はそれ以上!」というのは、目標設定としては確かにありなのだろう。

 だが、監督も基本戦術も対戦相手も違うのに、無条件で前回大会以上の成績を求めるのは、あまり現実的とは言い難い。次のロシア大会で日本が好成績を残したとしても、8年後にまた同じ轍を踏むような気がしてならない。

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