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岡野俊一郎と金子勝彦が語る日本サッカー(その2)TV中継で誤用が多い「ゴールマウス」と「ボランチ」

text by 藤江直人 photo by editorial staff

誤用が多い「ゴールマウス」

岡野 紙媒体を含めて「昨日はハーフコートで練習した」という表現をよく見聞きするけれども、サッカーの世界では、フットサルの試合会場を除いてコートという言葉は絶対に使わない。完全なる誤用です。

 コートとは法廷に由来する言葉で、テニスコートやバレーボールコートと言った具合に、四方を囲まれた狭い地域を指すんですね。サッカーはフィールドであり、選手たちがプレーするエリアをピッチと呼ぶんです。

 他に今大会でもアナウンサーが何度も間違えて用い、それに対して解説者が何も言及しない言葉にゴールマウスがあります。ゴールマウスとはかつてはゴールエリアを意味して、それが徐々に変化してきて、いまではゴール前の危険な地域を指すようになった。

 にもかかわらず、アナウンサーが「シュートがゴールマウスを外れました」と言うことがある。いったいどんなシュートなのかと問いたくなりますよ。「いいクロスがゴールマウスに入った」ならばわかりますよ。

 解説者はサッカーの専門家であるべきなのに、ゴールマウスという言葉ひとつにしても、その意味をしっかりと勉強していない。アナウンサーが間違えて使っているようだったら、放送が終わった後でいいので、ゴールマウスとはこういう意味だよとリードしてあげないと。

金子 はっきりと申し上げますが、僕は岡野さんにサッカー実況の基本を教えていただきました。1968年4月に『三菱ダイヤモンド・サッカー』がスタートした当時は33歳で、若気の至りといいますか、すらすら実況していればいいと思っていました。

 そうしたら、番組が終わった後に「ちょっと違うんじゃないかな」という言葉を残して岡野さんが帰られた。その晩は眠れませんでしたが、いま思えば自分が進歩するきっかけを与えてくださったんですよね。

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