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アジア 10年前

豪州で戦う2人の侍。“日の出づる国”マケドニアにルーツを持つクラブで出会った選手とコーチ。ほとばしるような情熱を共有

text by 植松久隆 photo by Yasuhiro Koga

コーチ修行でロックデールの門をくぐった古賀康彦

豪州で戦う2人の侍。“日の出づる国”マケドニアにルーツを持つクラブで出会った選手とコーチ。ほとばしるような情熱を共有
全て英語で行うコーチングで指導するU-11の所属選手と共に【写真提供:古賀康彦】

 彼の3季目のシーズンの始まりには、あるサプライズが彼を待ち構えていた。クラブに、コーチ志望の日本人が入団を希望していると聞かされたのだ。旧知の早稲田ユナイテッドの今矢からの依頼でクラブ側の受け入れの環境整備を手伝った村山は、そのときの感想を率直に語ってくれた。

「日本人コーチ(の受け入れ)は経験が無かったので、正直、プレッシャーはありましたね。(昨季所属の日本人)選手の入団時の側面支援は経験していましたけど、コーチとなると全然違いますから」

 しかし、そんな不安もコーチ修行でロックデールの門をくぐることになった古賀康彦(28)と初めて対面、意気投合したその日のうちに霧散した。

「本来、僕は初対面から自分をさらけ出さない性質なんですけど、ヤス(古賀)の時は違った。最初に会った時にすっと彼の人間性を受け入れられた。初対面で、僕の経験や考えなどを全て話したことには、自分でも驚きましたね」

 古賀康彦は、サッカーがプレーできない。プレー経験が無いと言うのでなく、身体的にプレーが許されないのだ。先天的な心臓疾患を抱えた古賀は、高校1年の時に、選手としてのプレーを諦める最後通告となるドクターストップを受けた。

 それ以来、12年の長きに渡って、余りあるサッカーへの情熱をコーチングに捧げてきた。関西外語大を卒業後に進学した早稲田大大学院在学中から足掛け4年、都立石神井高校サッカー部をコーチとして指導、自らのコーチングの適性を見極めてきた。

「もっと色々なことを学びたい」と、大学院在学中には、単身スペインに渡りコーチ修行にも挑んだ。1年という限られた時間の中で、言葉の壁などもあって自分が思い描いたほどの成果を上げられずに帰国するも、海外でコーチング修行をしたいという情熱は衰えなかった。

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