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Jリーグ 10年前

臨機応変にシステムを変えたFC東京。その中でボールを奪い続けた米本の存在感

text by 青木務 photo by Getty Images

中盤は明らかに手薄だったがボールを奪い続けた

 最終ラインは3バックとも5バックとも表現できたが、前線の3枚は高い位置を取り続けた。

 米本の言葉を借りれば、「3-4-3みたいな形というか5-2-3というか。フォーメーションを少し変えたりした」

 守備を強化し、攻撃の枚数も削らなかったFC東京。負担が増える中盤の「2」に入った米本と羽生の運動量は目を見張るものだった。

 最終ラインの前で防波堤になるだけでなく、チャンスと見るや前線にも顔を出す。また、前からプレスをかけるために羽生は主に右サイドのスペースへどんどん出ていく。そうなると必然的に米本が1ボランチのような形になり、場面によっては5-1-4と言える布陣にもなった。

 前に人数をかけつつ後ろにも枚数が揃っている。中盤は明らかに手薄だったが、そこに陣取る米本は平然とこう言った。

「にゅーさん(羽生)が真ん中にいるよりは僕がいた方がいいと思う」

 その言葉通り、攻撃で持ち味を発揮できる羽生には前からのプレスに専念させ、米本はセンターバックの前で相手の攻撃を食い止めていた。

 インサイドハーフでは攻守に求められる仕事が多く、攻撃時はタッチライン際までスペースを作らなければならない。それでいて、悪い奪われ方をすれば外に開いたインサイドハーフとアンカーの間を自由に突かれてしまう。タイミングとバランスが常に保たれていなければ90分間機能させることは難しい。

 この日は途中のシステム変更でボランチに入り、結果的に鋭い読みとボール奪取力がより顕著に発揮された。それでも、チームとしては勝ちきれなかったことが悔やまれる。

 後半25分にエドゥーのPKで先制しながら、直後にセットプレーから失点した。

 だがここ2試合は複数失点を喫しており、この日は1失点に抑えることができた。流れの中から決められなかったことはチームとしては収穫だろう。

 神戸は前線にマルキーニョス、ペドロ・ジュニオールなど「個」を備える選手がおり、彼らを操る森岡も決定的なプレーができる。

 攻撃に特徴のあるチームに対してFC東京は堅い守備で対抗し、米本も相手の起点を潰すことで存在感を見せた。

 豊富な運動量と危機察知能力を示した。勝利にこそ繋がらなかったが、この日の米本のプレーは評価されて然るべきだろう。

【了】

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