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日本代表 10年前

“選手≠タレント”。大ブレークの武藤、過剰な注目は避けるべき。才能を育むのは周囲のサポート

FC東京のFW武藤嘉紀が大きな注目を集めている。Jリーグではルーキーイヤーながら25節終了時点で9得点を挙げ、ハビエル・アギーレ監督によって代表デビューも果たして初得点も決めた。しかし、選手をタレントのように扱う日本の風潮は、選手の成長にとって時に足かせとなる。

text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

大ブレークの武藤。オフには広告塔としてタレント活動?

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大きな注目を集めているFC東京のFW武藤嘉紀【写真:Getty Images】

 武藤嘉紀は今シーズン、本来セレッソ大阪のものとなるはずだったJリーグの“シンボル”となった。柿谷曜一朗が去り、アイドルグループの一員のようなルックス、迷路のようなドリブルスキル、そしてピンクのスパイクまで引き継いだ。

 武藤にとってはありがたいことに、降格争い(またはマーケティング面での不振)に巻き込まれず、少なくともしばらくの間はサッカーのみに集中出来る環境が整っている。

 彼は今シーズン初めてプロに転向した。シーズン前にはJリーグにおける“時の人”となることを予想した人は少なかっただろう。しかし、彼は瞬く間に駆け上がっていった。もちろん、私も彼の成熟された能力には感銘を受けているが、少し心配もしている。

 12月にはベストヤングプレーヤー賞を受賞することが確実と思われ、日本の風潮としてその後は広告塔のような活動を強いられるはずだ(彼にその義務は無いにも関わらず)。そして、彼がJリーグの優秀なFWとして認識されることで伸し掛かるプレッシャーに耐えられるかが不安だ。

 ハビエル・アギーレ監督が試合後のコメントで危惧していたように(http://www.fifa.com/world-match-centre/news/newsid/243/719/6/)、日本ではサッカー選手をタレントとして扱う風潮がやむ気配がない。

家族向けの重要なエンターテイメントがプレミアリーグであるイングランドとは違って、日本はスポーツではなく東京ディズニーランドであるように、サッカー選手であってもしばしば危険な方向へ向きを変えられる。

 20日の川崎フロンターレ対FC東京は、重要なトップレベルのスポーツと煌びやかなエンターテイメントの境界線がぼやけていることの最たる例と言えるだろう。両チームのキャプテンである中村憲剛と森重真人が仮面ライダーのベルトを身に付けてポーズをとっていたのだ。

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