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ジュニサカ 10年前

なでしこジャパン未来の星・猶本光選手に見る才能の育て方・伸ばし方

text by 木之下潤 photo by fukuokaJ・anclas

学校とクラブの連携により適切なカテゴリーでプレー

 猶本選手の成長を中学から高校まで6年間見守り続けた福岡J・アンクラス河島美絵代表(当時監督)は初めてプレーを見た時の印象をこう言います。

「彼女がトップに上がってきたのは中学2年生のころ。最初は、ボールタッチの柔らかい選手だなと思った程度です。猶本は高さがあるわけでも、速さがあるわけでも、強さがあるわけでもありませんから。

 今も抱える問題ですが、女子サッカーはチーム数が少ないのが現状です。だから、中学生や高校生、社会人が混ざった状態でリーグ戦やトーナメントが開催されます。彼女は中学生でしたから明らかに体格差で負けていました。テクニックのレベルうんぬんの前に、大人と子どもの体格差でサッカーにならない部分もあったので、中学3年では下部組織に戻したんです。メンタル面もまだまだでしたから」

 アンクラスの下部組織を指導していた鶴原監督も状況を理解し、鍛え直しています。
「猶本と同世代の選手たちは技術が高かった。だから、フィジカル面でのストレスが多い状況よりは、もう少しのびのびとテクニックを磨いた方がいいと判断しました」

 高校に進学すると、再びトップチームに昇格します。中学時代はトップと下部組織との二重登録という形で試合をこなしていた猶本選手ですが、高校に入るとトップだけの登録になります。フィジカルという壁にも現実的に向き合わなければなりません。河島代表によると、個性を伸ばしつつ、体格的な問題も解消していったそうです。

「猶本の武器は足元のボールテクニックです。ワンタッチ目のコントロールと頭脳は他の選手にはない才能でした。成績は学年でもトップを争うほどだったんです。だから、理屈というか、物事の原理を頭で理解できれば、それをプレーに反映するサッカー脳はありました。でも、頭も良かったぶん、将来の選択肢も多い。そこでサッカー選手として大成させるため、トップだけの登録に切り替えて退路を断ち、彼女と一緒にサッカーに向き合うことを決めました」

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