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本田圭佑 9年前

「走る距離が80メートルから30メートルに」。本田爆発の要因はインザーギによる戦術の整備と冷静さ。「ゴール前では悪辣になれ」

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

「開いているところに素直に蹴った」。ゴール前での冷静さと技術を得る

 一方そういった外的要因とは他に、点を取ることに対する本田の意識の変革と、プレイの洗練も背後にはあった。フリーになったところでパスを受け、傍目には簡単にゴールに流し込んだように見えるが、ああ言った局面でシンプルかつ正確なプレイをするのは実は難しい。

 他ならぬヴェローナ戦の後半、こんなシーンがあった。ヴェローナのFWファニート・ゴメスが本田と似たような形でアッビアーティと1対1になったのだが、一瞬の判断をした挙げ句にシュートを外してしまった。

 本田自身も、そういった場面での課題の克服を目標に掲げ、試合に臨んでいた。

「いつもはフリーでボールを貰ったときとかは考えすぎて、ジャマイカ戦もそうだったんですけど、外すことが僕は良くあるんですけどね。今日は開いているところに素直に蹴ったといいますか、あまり考えすぎずに」

 その結果が、あの正確なシュートだったというわけである。

 イタリアサッカーの世界においては良く「ゴール前ではカッティーボ(悪辣)になれ」という言い方がされるが、これは『冷静かつ冷酷にチャンスを突け』というニュアンスのようだ。

 必要とされるのは、点に結びつくコースをシンプルに突ける冷静さと技術が必要であり、それを磨いた故に本田は点を取れているということだ。

 ヴェローナ戦後、地元紙には2日に渡って『HONDA』の名前が踊っている。現在までの活躍はイタリアメディアの間にも大きなインパクトを残しているが、少しでも活躍が出来なければ掌返しの大非難が待っているのもこの世界だ。

 さしずめ次節のフィオレンティーナ戦で点に絡めなければ、「強豪相手に本田は通用しない」などという言い方もされかねない。

 ヴェローナはプロビンチャには珍しく攻撃的で、もともと失点の多いクラブではあった。フィオレンティーナも攻撃的だが、後方の守備組織はもっとしっかりしている。

 そういった相手を前に本田が点に絡み、CLやEL出場権を争う直接のライバルを蹴倒す仕事が出来るかどうかで、ここまでの好調の真価が問われることになるだろう。逆に言えばそれに成功した時、本田の立場は一層盤石なものになるはずである。

【了】

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