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青いピッチ、スローイン廃止の提案。我が道を行く男、マンU指揮官ファン・ハールは奇才か? 名将か?

これまで残してきた結果は申し分ないが、ルイ・ファン・ハールはモウリーニョやグアルディオラのような評価を受けていない。その原因は、このオランダ人監督の独特なキャラクターにあるのかもしれない(翻訳:田邊雅之)。

text by マーテン・メイヤー photo by Getty Images

青い色のピッチを使用してもいいか?

 オランダのサッカークラブ、SCテルスターがオランダのサッカー協会であるKNVBに、青い色のピッチを使用してもいいかと問い合わせたことがある。

 KNVBは、この奇妙な問い合わせに回答するべく、FIFAに打診を行う。助言を求められたのは当然だ。天然芝が植えられた緑色のピッチでプレーすることに、誰もが満足してきたというのに、なぜ青い人工芝のピッチを使わなければならないのだろうか。

 こんな突飛なアイディアを思いつくのは、サッカー界で一人しかいない。ルイ・ファン・ハールである。

 彼は他の人間が口にするのを躊躇うようなアイディアを思いつき、幾度となく物議を醸してきた。早朝、水が撒かれたばかりの天然芝のピッチから立ち上がる草いきれほど、魅力的なものはない。ファン・ハールは、この点に関しては他の多くの人々と同じ意見を持っていたが、彼は人工芝のメリットも認識していた。

青いピッチ、スローイン廃止の提案。我が道を行く男、マンU指揮官ファン・ハールは奇才か? 名将か?
ファン・ハール監督は人工芝のメリットも認識していた【写真:Getty Images】

「(人工芝を採用すれば)、世界中のグラウンドが同じ条件になる。天然芝のピッチのコンディションが、スタジアムごとに極端なほど違っている状況よりはいいと思う」

 今日のサッカー界では過密日程が組まれているため、ピッチをきちんと整備する時間がほとんど確保できない。結果、ピッチのコンディションはばらつくことになるし、試合のレベルも落ちかねない。これに対して「第3世代」を迎えた人工芝のピッチは、化学繊維性の芝と天然芝を掛け合わせて作られているため、クオリティーを保つことができるようになっている。

 現に大多数のプロのクラブチームは、この種の人工芝のピッチを少なくとも一面は備えるようになった。

 他人の発言であれ、戦術の進化であれ、あるいはイデオロギーやテクノロジーにまつわる問題であれ、ファン・ハールはサッカー界の動向を常に注視してきた。そしてファン・ハール自身、歯に衣着せぬ発言を続けてきた。

 たとえば2010年のW杯南アフリカ大会の欧州地区予選に関しては、こんなコメントを出している。

「世界中の子供たちは、現代のサッカー界における最大のスター選手の一人が、『ずる』をしたのを目撃した。(ティエリ・)アンリは、フランス代表をW杯に導くために手を使ったんだ。

 過去数十年間、サッカーというスポーツは目覚ましい発展を遂げてきた。流れ込む資金、視聴者数、オーストラリアやアメリカのような国々の成長……これはあらゆる側面に関して指摘できる。

 我々はサッカーに対する世界的な関心の高まりを、正しく受け止めていかなければならない。W杯はサッカー界の雛壇だし、大きな名誉がかかっている。だからこそ私は(ファウルの有無を見極めるために)テクノロジーを活用できる分野では、積極的に導入すべきだと主張しているんだ」

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