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震災、原発事故から4年。日本代表シェフ西氏とめぐる、Jヴィレッジ・福島・復興の今

text by 後藤勝 photo by Masaru Goto , Naoki Hiromoto

「楢葉町の避難を早く解除してほしい」

 福島県は大きく三つの地域に分かれる。

 会津若松市、喜多方市などがある会津はほとんど新潟県と表現してもいい場所だ。その右隣が、東北新幹線が通り、県北に福島市、県中に郡山市、県南に白河市を抱える中通り。東日本大震災と福島第一原子力発電所事故によって深手を負ったのが相馬市、南相馬市、いわき市、相馬郡、双葉郡のある浜通りだ。

 いわき市から太平洋側を北上していくと双葉郡広野町。隣接して楢葉町があり、この両町にJヴィレッジの敷地がまたがっている。

 Jヴィレッジは福島第一原子力発電所の収束に対応する作業員や東京電力の関係者の前線基地となって久しいが、西氏によってレストラン「ハーフタイム」は営業中だ。

震災、原発事故から4年。日本代表シェフ西氏とめぐる、Jヴィレッジ・福島・復興の今
アルパインローズの入口にはさまざまな選手のサインが散りばめられたユニフォームが展示されている【写真:後藤勝】

 そしてJヴィレッジ内にあったもうひとつのレストラン「アルパインローズ」は広野町の小高い丘の上に移転している。

 このアルパインローズで昼食を摂った。米と野菜は福島産である。もちろん放射性物質検査をして、非検出の作物のみだ。煮込みハンバーグのランチを食べたが、絶品だった。おいしいかどうかではなく、安全かどうかが問題なのだ、とお叱りを受けそうだが、美味であるものは仕方がない。

 ごはんはやわらかすぎず、米が立っていて歯ごたえがあった。炊く前に米を水に浸ける時間に工夫がある。その調理のコツもさることながら、やはりもともとの米がいい。それだけに、原発事故が発生する前は一大農産地だったという事実が、重くのしかかってくる。

 ここで西氏に話を訊いた。第一声は「(Jヴィレッジのある)楢葉町の避難を早く解除してほしい」だった。

 2012年に避難指示が解除された広野町には、近いうちに役場の前、6号線の脇にスーパーマーケットが開店するという。そういったものができると広野も人々が戻ってくる、と、西氏は期待している。2014年の時点でも帰還率は半分以下。広野町はいまだに閑散としている。

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