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震災、原発事故から4年。日本代表シェフ西氏とめぐる、Jヴィレッジ・福島・復興の今

text by 後藤勝 photo by Masaru Goto , Naoki Hiromoto

福島の食物は食べられないのか?

「いまは30分で農産物の放射性物質検査ができるようになっています。福島産でも、実際に出荷されるのは非検出の作物です」

 裏を返せば、他県にも、検査をすれば弾かれるであろう作物が一部に存在する可能性がある。

「こんなことを言うと、自分たちの作物を風評被害で食べてもらえないから他の地域を巻き込もうとしているのだろうとおっしゃられるかもしれませんが、日本全国で検査できる体制をつくったほうがいいのではないか、という気がします。

 福島のものを食べてくれないからこう言うわけではありません。何が安全かを見極めるためにやるべきではないかと思います」

 この西氏の言葉に、前述の廣本氏が「震災後のマイナスからのスタートから、ここまでやるかという粘り強い調査と、徹底的な分析を重ね、だめでないところは胸を張って自分たちがおすすめして、選んでもらうという取り組みが福島では進んでいる」と応える。

 安全か危険かというフィルターを通して食物を口に入れることはもちろん正しい。ただその峻別は、産地ではなく、実際に放射性物質が検出されるかされないかの「事実」ありきではないか。

 話の切れめに、西氏が「このあとは大川(魚店)さんに行くんですか?」と言い出した。Jヴィレッジを見たあとその予定だが、時間には余裕があると答えると、西氏の眼つきが変わる。

「ちょっとご案内しましょうか。原発の脇まで行きますか? じゃあ、脇を通りますか。中には行けないけれど」

 曖昧な印象ではなく実測値をベースにしないと、安全か危険かを正しく判定することができないということは、生活する土地の空間線量についても言える。

 百聞は一見に如かず。わたしたちは安全と危険の境目を探ることにした。

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