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【独占インタビュー】市長選出馬の小谷野薫氏。元サンフレ社長が語る広島市の未来と課題

text by 編集部 photo by Ryota Harada , Yasuhiro Suzuki

「スタジアム問題は動かない広島の象徴」

――一方で「サッカースタジアムを作りたいだけではないか」という声もあります。

サンフレッチェ広島のブレないマネジメントに迫る。“予算中位”でなぜ結果を出せるのか?
サンフレッチェ広島ホームのエディオンスタジアム(広島ビッグアーチ)【写真:鈴木康浩】

「私は市民運動主体でやっていますので、スタジアムのワンイシューだけでは、そもそも市長になろうとは思いませんよ(笑)。むしろ、私の本来の本業である、財政再建をはじめとする経営や経営の経験やノウハウを活かして、『広島のまちのためにやってやろう』という意欲が大きいですね。

 また、私の動きに関して、『サッカー利権』や『スタジアム利権』と揶揄する声もありましたが、もしそんな利権があったら、私は社長を辞めていません(笑)。別の言い方をすると、サッカーはしっかりしたビジネスにならないといけないということでもあります。

 ただ、このスタジアム問題は、動かない広島の政治の象徴だと言ってよいでしょう。旧広島市民球場の跡地を何年も遊ばせておくということは、普通に考えても、とんでもないことだと思います。

 これは、私が広島に惹かれた理由でもあるのですが、広島の『人がとても良いけど、その裏返しとして楽観的で、危機意識に乏しい』と言う気質が残念な方向に働いている部分があります。

 スタジアム問題にしても、『旧市民球場跡地にできればいいな』や『旧市民球場跡地以外であれば他の場所に作ればいい』という次元では考えられても、『次の4年間の広島市政の帰趨は、サンフレッチェの存続に関わっている』という問題として考えられている方々はまだ少数だと思います。

 Jリーグのライセンス基準におけるスタジアム施設の基準や財務基準の問題に抵触する可能性に、サポーターや市民が危機感を持たないと、サンフレッチェは本当に無くなってしまう可能性があります。

 お蔭さまで、サンフレッチェは確かに2連覇をし、選手や監督たち現場の頑張りで賞金を獲得できたので、実質的に無借金になり、3年連続で黒字を出しています。しかし、賞金を除くと現在のサンフレッチェの経営はようやく収支トントンです。

 私がスタジアム検討協議会などでも述べていることですが、サンフレッチェ存続のために通常のスポンサー相場よりもかなり高くスポンサー料を支払っているエディオンがスポンサーを降りれば、サンフレッチェは2年かそれ以内に経営が立ち行かなくなります。

 市民の皆さんは常にサンフレッチェが、Jリーグでも相当最悪に近いアクセスと施設のスタジアムで、駐車場関連など余分なコストを持ち、他の部分のコストを切り詰めながらぎりぎりの経営をしている状況にあるというのをご理解いただきたいですと思います」

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