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意志あるところに道は開ける――。欧州挑戦を決めた武藤の思い。FC東京・立石GMが語る移籍の真実

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「2年目を心配していた」。杞憂に終わった懸念

 立石氏自身も、武藤が移籍するとしたら2年後、つまり2016年の夏になるのではと考えていた。目標が大幅に前倒しされたのはなぜなのか。ハビエル・アギーレ前監督のもとでブラジル大会後に発足した日本代表に武藤が抜擢され、海外組と同じ時間を共有したことにあると立石氏は見ている。

「周りの意見があったんでしょう。刺激ではなくアドバイスをもらっていたと思いますよ。代表で一緒にプレーしていると、そうなるのはしょうがないことですよね。いますぐは無理だと武藤には言いましたが、一方で『頑張ったらこの夏に』という話もして、契約を更新しました」

 こう振り返る立石氏は、実はある懸念を抱いていた。W杯ブラジル大会明けからゴールを量産してきた武藤だが、終盤戦になるとコンディションが低下。最後の5試合に限ればわずか1ゴール、横浜F・マリノスとの最終節ではベンチスタートを強いられている。

 初体験のプロの世界を戦ってきたことで蓄積した疲労。日本代表にも選出されたことで、飛躍的に増大した注目度がもたらすプレッシャー。武藤は心身ともに消耗していたと、立石氏は明かす。

「1年目の最後は、成長がちょっと止まってしまった。その意味で、正直、2年目を心配していたんです」

 本来ならばオフとなる1月も、アギーレジャパンの一員として真夏のオーストラリアでアジアカップを戦った。立石氏がさらに募らせた不安は、しかし、杞憂に終わる。

 キャリアパスの一部を差し替え、今夏での海外移籍を短期目標に書き加えた武藤自身が、今シーズンの開幕までになすべきことを理解していた。1年目を終えた武藤自身が、こんな言葉を残している。

「ひとつひとつのスキルもそうですし、フィジカル、テクニック、メンタルとすべての面においてワンランク、ツーランクと成長しないといけない。オフもしっかりとトレーニングをしながら、休むべきところはしっかりと休むようにしたい」

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