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リーグ1の“異端児”ビエルサ、突然の辞任はなぜ? フランス流に染まらない傍若無人なエゴイスト

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

クラブは後任探しに奔走。その候補は?

 やや意外だったのは、同業人たちが概ね辞任を歓迎する発言をしていることだ。「マルセイユにとってはこれで良かったんじゃないか」とスポーツニュース番組の取材に答えたボルドーのトリオー会長。

 同様に着任直後から彼の特殊な行動について苦言を呈していたマルセイユの元会長クリストフ・ブーシェ氏も「クラブにとっては良い結果。このようなエゴが強く、気まぐれで調和を保てない人物と一緒にやっていくことはできない」と辞任に賛成。

 サンテティエンヌのゴーティエ監督も「彼が経験豊富な監督であることは確かだろうが、“エル・ロコ”という異名はおそらく多くを語っている…」と、含みのある発言をしている。

 インタビューには答えず公式の会見でしか発言しない、すべてにおいて自己流を通す、という彼はフランスリーグの“流儀”に染まっていない異端児だった。それは確かだし、もともと個性の塊のような御仁だ。

 しかし外国人から見れば、フランス人も相当個性的で、我の強いエゴイストだ。そんな彼らが、個性むき出しの人物を異端児扱いするのは不思議な気もするが、逆にそれだからこそ、自分たちとは違う亜流は受け入れ難いのかもしれない。

 フロント陣は今頃、後任探しに翻弄している。地元メディアの間では、ドルトムントから解任されて以来無所属のユルゲン・クロップや07-09年にマルセイユを率いて3位、2位と好成績をおさめ、いまだにファンから絶大な人気を誇るエリック・ゲレツ、さらには昨夏ボルドー監督就任の話もあったジネディーヌ・ジダンの名前も挙がっている。

 ビエルサ監督は、昨夏の就任からピッチの上でも外でもなにかと話題の人だった。3バック気味の独特のフォーメーションを用いて、昨季は前半戦を首位で終え、「秋季のチャンピオン」にも輝いた。2年目は開幕戦直後に辞任と、去り方まである意味では実に彼らしかった。

 刺激に欠けるリーグ1だけに、クセのある御仁が消えてしまうのはとても寂しい気がする。

【了】

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