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「本気でトップを目指す」。ミラン批判の重圧の中、本田が示した覚悟と責任

text by 編集部 photo by Getty Images

「本気でトップを目指す」。ミラン批判の重圧の中、本田が示した覚悟と責任
本田圭佑【写真:Getty Images】

「なんで出られなくなったか分からない」
「ある程度、誰がやっても無理っていうのはわかったと思う」
「選手は気づいていてもこのチームは変わらない」
「ファンは内容など見ないし、勝てば拍手する」

 所属するミランに対して、辛辣な意見を口にして波紋を呼んだFW本田圭佑。チーム批判ともとられかねないこの発言に対しては、全くの正論と理解を示す声から出過ぎた真似と非難する声まで賛否が集まっている。

 本田自身は、この発言をしたセリエA第7節ナポリ戦後に日本代表へと合流。「自分の正義を貫くことが自分自身であり続けるためにも必要なこと」と、あくまでも自らの信念に従っての発言だったことを強調した。

 一方で、このような言動には当然ながら責任が伴う。それには本人も「本気でトップを目指す身として、ただ行動を起こすことはない。目指すところの逆算で行動をとってきている。それに相応しくない行動っていうのは逆に言えば取りたくないというのが自分のフィロソフィー」と、その自覚を語っていた。

 あるいは、思うような出場機会が得られない現在に自らプレッシャーをかけたともいえる状況で迎えたW杯2次予選シリア戦。ここで低調なパフォーマンスに終始すれば、今後の風当たりは一層強まることは十分に予想できた。

 そして、右ウイングとして先発した本田圭佑は自らを鼓舞するように積極的にボールに絡もうとプレーした。時に強引にも映るその姿は、のしかかる重圧を振り解こうともがくようにも感じられた。

 しかし、そのパフォーマンスはやはりプレッシャーを感じながらだったといえるものだった。27分と78分には決定機を迎えながらシュートは枠外へ。

 それでも55分にはFW岡崎が獲得したPKを冷静に決めて先制点を獲得。さらに84分には巧みなヒールでのラストパスをFW宇佐美に送り、この日3点目となるゴールをアシストした。

 十分に出場機会を得られずコンディション維持も難しく、自らの発言によって大きなプレッシャーを背負った中でのプレーは本来の姿からすれば、決して優れたものではなかった。

 その中でも要所を締めて1ゴール1アシストを記録し、チームの勝利に大きな影響を与えたのは、合宿中に語った“覚悟”を持ってプレーしたからこそ。この試合後、本田は「3人、4人、5人がビッグクラブにいれば、それこそ強い時代がくるし、そこを目指して行かないとダメだと思う」と語った。

 この「本気でトップを目指す」という意識がこれまでの本田を育て上げ、自らの処遇に異を唱え、低迷続くミランというクラブへの問題提起へとつながったといえる。

 何より、この意識こそが多くの日本人選手に欠けているもの。日本サッカーが世界レベルへ近づくためには、やはり本田圭佑は不可欠な存在であり、だからこそ欧州トップレベルでまだまだ活躍してもらわなければならない選手だ。

【了】

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