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その時、パリでは何が起きていたのか? スタジアムは騒然、街は惨劇…現地記者が見た同時テロの現場

text by 小川由紀子 photo by Yukiko Ogawa

デシャン監督の会見も中止に

 急いで地下の会見場に降りると、FFF(フランスサッカー協会)の広報担当は、「デシャン監督はとても会見できる心理状態ではない」と告げ、会見がキャンセルされたことを報告。同時に選手たちとのミックスゾーンでの取材も行なわないと発表された。

 その間グラウンドには、スタンドにいた観衆たちが続々と降りていた。出口に通じるドアを封じられた東側スタンドの観客たちが、行き場を失って下へ下へと降りて来たのだ。

 この頃になると、お茶の間でテレビを見ていた家族や友人たちから、外の世界で何か起きているかを告げられた人が出始め、次第に緊張感が高まっていった。ここから出られないのでは、と案じて戸惑う親子や泣き出す子供たちもいた。

 それでも警備隊の誘導に従ってそれぞれが帰路へと向かい、0時を過ぎる頃にはピッチ上の観衆はすべてスタジアムから退避していた。筆者も0時を15分ほどまわったころスタジアムを後にしたが、人もだいぶはけて、地下鉄駅へ向かう人もまばらだった。

 自爆テロの爆発現場となったスタジアムの東側は、ファストフード店やカフェが並ぶ一帯で、スタッド・ド・フランス周辺ではもっともにぎやかなエリアにあたる。

 散り散りになった人体が発見されたことで、早い時点から自爆テロと断定されたのだが、死亡した2?3人の首謀者だけでなく、周辺に居合わせた数人が巻き込まれて死傷者を出していた。

 駅へ続く通路は反対側だったこともあり警備もほとんどいなかったが、真っ暗闇のどこかからいきなり誰かが走って来て爆発でもしようものなら…という言い知れない恐ろしさは周囲に漂っていた。

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