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米で禁止令。ヘディングは害悪か?健康被害だけでなく、競技そのものに影響をもたらす可能性も

text by 内藤秀明 photo by Getty Images

競技そのものに影響も?

 ただ、一部の選手こそそれで生活しているとはいえ、基本的にサッカーは楽しむものだ。だからこそ、デメリットはあれども深刻な病気を煩う可能性があるプレーを少なくとも低年齢期だけは排除するという考えを全否定することはできない。

 また、つい少し前まで「サッカー不毛の地」と呼ばれてきたアメリカだが、MLSの誕生と共にサッカー人気は向上傾向にあり、現在はディディエ・ドログバやスティーブン・ジェラードを始めとした多くのスター選手がアメリカの地に集っている。

 サッカー界におけるアメリカの影響力は以前に比べて増しているこの現状を考えれば、もしかすると「年少期はヘディングさせないでおこう」という流れは全世界に波及する可能性もある。もしそうなれば、この決定が今後のサッカー界のトレンドを左右する分岐点にもなりうる。

 過去にも、サッカーは幾度となく時代背景やゲームとしての魅力を向上させることを目的にルールが変更され、それと共にサッカーの戦術や個人に求められる役割が変わってきた。

 GKに対するバックパス禁止などがその典型だろう。このルール変更によって、キックでのバックパスを手でキャッチすることを禁止されたGKは、足下の技術が要求されるようになった。

 そして、マヌエル・ノイアーや、ダビド・デ・ヘアのような正確なフィードを両足で送ることができるGKが生まれた。

 仮定の話だが、年少期の選手たちがヘディングをするのを止め、ヘッドでのプレーを得意とする選手が減った場合、当然として、ショートパスを中心としたスタイルで戦うチームや選手は増えるだろう。そうなれば、体が大きくなく、空中戦に難を抱える日本代表にとって、少しに戦いやすい時代になるとも言える。

 どれもこれも、現段階では「たられば」に過ぎない。とはいえ、「あの決定でサッカー界はずいぶん変わったよなぁ」と振り返る日もいつか来るかもしれない。

【了】

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